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てんかん持ち猫との暮らし

私の家には、今年9歳になる猫がいる。
とっっっても可愛いし、ずっとくっついている(私が)わけだが、猫にはある病気がある。それが、てんかんだ。

てんかんとは、けいれんの発作が不定期に、繰り返し起こる病気である。とはいえ、薬で症状の程度を抑えていけば、ふだん通り生活することも可能だ。夜中に家の中で"運動会"が始まるときもあるし、喉の下を撫でればゴロゴロと鳴いている。

そんなてんかん持ちの猫との暮らしを私の目線からお話する。私は愛玩動物看護師であるけれど、その前に猫を飼う1人の人間である。看護師として、発作時の対応や投薬方法もお話するが、飼い主さんの気持ちに少しでも寄り添えたら嬉しい。


猫との暮らし

朝6:00。
ベッドから起きると家のどこからか「みゃー」と猫の鳴き声がする。

目をこすりながらリビングへ。カーテン越しからの太陽の光でうす明るい室内。その中できらりと光る2つの目。元気に「おはよう!」と猫がもう一度鳴く。おはよう、早起きさん。

猫との暮らしは私に安心感を与えてくれている。

朝起きたとき、出かけるとき、帰ってきたとき、眠るとき。私は猫の頭を撫で、そのふわふわの身体に顔をうずめ、「いってくるね」「ただいま」と声をかける。

まるくなって眠っている姿、呼吸で上下するおなか。ちゃんと寝返りをうっていて、もぞもぞしているな、と顔を覗き見れば、肢で半分隠れた顔から目だけで「なんじゃい」と見返してくる。

もちろんちゃんとした会話はできないけれど、そこにいるだけでいいという愛情って、こういうものなのかなと思っている。


てんかん持ち猫との出会い

先述のように私が飼っている猫は、てんかん持ちだ。

てんかんとは、全身けいれん発作や体の一部の硬直、ふるえなどを繰り返す慢性の脳疾患である。

引用:「愛玩動物看護師の教科書 第5巻」236ページ(緑書房・ 2022年4月1日発行)

残念ながら、てんかんは治る病気ではないといわれている。(人間医療はわからないのだが…)ただ、定期的に薬を飲み、発作を起こす回数や症状を抑えていけば、ふだん通り生活することも可能だ。

もともと動物病院でお世話されていた我が家の猫。他の猫と比べると、どこかどんくさいところがあって、おやつを目の前にしても、くんくんと鼻での確認作業が長く、なかなか喰いつかないので、他の子に食べられてしまったり。

ちょっぴり個性的で、ある意味猫らしくない性格が私の中の猫イメージを壊し、犬派であったにも関わらず心を射止められてしまった。

また猫初心者である我が家では、そのくらいのんびりさんのほうが結果的によかったともいえる。

家族に迎え入れてもう2年が経つ。相変わらず発作ゼロではないけれど、我が家の会話は圧倒的に増え、猫を中心とした家族の団結力は日々高まっている。


てんかん持ち猫との暮らし

てんかん持ち猫を迎え入れるにあたって愛玩動物看護師の私が家族に伝えたことは、①投薬方法 ②発作が起きた時の対処法 である。

①投薬方法

https://www.youtube.com/watch?v=yOoOGD4o92I


発作を抑える薬は、生涯飲ませ続けなければならない。我が家の猫は朝夕の1日2回投薬だが、その子の症状や薬の効果次第で投薬が1日3回だったり、薬の形状もさまざまだ。

投薬は毎日、そして生涯行うことだからこそ、猫には嫌な気持ちになってほしくない。なるべくシュシュッと手早く。

ちなみに我が家では、投薬後にごはんルーティーンになっているので、薬を見せると「ごはんタイムですな!」とみゃーみゃー鳴く。

暴れてしまう猫は、タオルで体をくるんだり、投薬補助グッズもある。

https://item.rakuten.co.jp/ant-pack/dc-1961-1/?iasid=07rpp_10095___e0-lysbz5jg-59-0d065601-c17f-4004-b3d0-f5e9d53dae14

↑インプッターは細長い棒状の投薬器で、先端に薬をはさみ、動物の喉の奥まで届けることができるので、猫の口に指を近づけることが怖い人や攻撃性のある子にもおすすめである。

また、錠剤の薬を粉にして液体に溶いてのませる、チュールに混ぜる方法(完食してもらう)もある。

②発作が起きた時の対処法

発作が起きたときは、まず自分が落ち着くこと。

自分の猫が全身をがくがくと震えさせる様子は、可哀そうを飛び越え、恐怖やパニックを引き起こす。

我が家で初めて発作が起きたときは、母が今まで聞いたことないような声で私の名前を叫びながら部屋に飛び込んできて、心臓が飛び出るかと思った…

発作が起きているときは、あわてて抱き上げたりせず、猫がまわりの物にぶつからないよう、物をどかす、クッションを置くなど身体の保護をする。また、噛まれるおそれがあるので、口の中に手などは入れないこと。

可能であれば、発作の様子を動画に撮る、どのくらいの回数・時間発作が続いていたか記録すると診察の参考になる。発作がとまらない場合はかかりつけの動物病院へ。

参考:渡辺直之「犬のてんかんのお話」冊子 制作:住友ファーマアニマルヘルス(物産アニマルヘルス株式会社)

それでも君と暮らす

毎日の投薬があるので、投薬の時間には家族の誰かしらが家にいる状態を作らなければならず、薬の費用もかかる。発作が起こる姿は何度見たって心が痛む。

圧倒的に普通の猫よりも手がかかるけれど、それでも、てんかん持ち猫と暮らすことは不可能ではない。

それは、てんかん猫でも保護団体などから迎え入れてほしいということを言いたいわけではもちろんなくて、すでに飼っている自分の愛する猫や犬が急に発作に見舞われたときに、不安や悲しみでいっぱいになる飼い主さんたちをたくさん見てきているところからの想いだ。

「私の猫もてんかん持ちなんですよ、びっくりしますよね。」と話すと、発作に伴う脱糞の片付けや発作の姿を見ていられないことなど、ぽつりぽつりと思いを伝えてくださる方がいる。

てんかんにも種類や原因がさまざま。獣医師と相談して必要な検査や薬の処方など(詳しいことは獣医師に託しますが)いろんな選択肢をもって、動物だけでなく飼い主さんの不安も取り除きながら暮らしていくことに繋がればと思う。

今日も我が家の猫はお気に入りの場所でおなかを出して寝転んでいて、私はわっしゃわっしゃと、そのおなかを撫でるのだ。

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