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読書感想文『 海賊とよばれた男 』戦前戦後の日本人にあったもの、いまの日本人にないもの

『 海賊とよばれた男 』を読むと、日本人であることを誇らしいとおもうとどうじに、日本人であるのにチャランポランですいませんと思わされる。
戦前戦後の日本人たちの汗と血でつくられた繁栄のうえに、あぐらをかいて、屁をこいて、酒を呑んだくれて、すいません。

『 海賊とよばれた男 』の主人公と仲間、先輩たちは、気骨があり、厳しい優しさがあり、いうべきことはいう、スジをとおす凛々しい姿を読むと、心の奥底でほこりをかぶっている大和魂にぽッと灯りがともる。
こんな立派なひとになりたい、こんな立派なひとのもとで働ければいいな、と読みながら、ずっと思っていた。

ただ、主人公の商店は、タイムカードもなく、店員をクビにせず、定年もない、わたしがその商店ではたらいたならば、サボりそうだなと思ったのは内緒にしておく。

『 海賊とよばれた男 』の主人公は、日本のために、国民のために働こうと、商店をたちあげる、そのころ見向きもされていなかった油をあつかう。
主人公の商いには、つねに困難や邪魔、いやがらせ、慣習がたちふさがる。
なんども、なんども、主人公の商店はつぶれかける。
ページをめくるたびに、やすむまもなく困難が波のように襲いかかる。
上下巻ひたすらに策略や運命、いやがらせに翻弄され、おぼれかける主人公。
もう、ダメだ、お金がない、どうしようもない状況におちいるたびに、主人公は「なにくそっ」と困難をけっ飛ばし打開する。

商店の従業員が一丸となり、困難な作業にいどむ、不可能といわれた作業をなんども成功させる。
金がつきかけると、誰かが主人公の商店に融資してくれる。
主人公のひとがらと商店の社員の働きに心をうごかされ、主人公の商店に融資することをきめる。
日本人だけでなく、アメリカの海外の銀行につとめる冷静な目をもつ人物の心すらもうごかす主人公と商店の魅力は、小説のなかにあふれかえっている。

『 海賊とよばれた男 』は、大河ドラマであり、冒険活劇ともいえる。
それほどに主人公に魅力があり、困難をぶち破る印象は、なろう小説や時代劇にちかい爽快感がある。

わたしは、この物語の主人公は、架空の人物だと思っていた。
それほどに、よくできた、都合がよすぎる物語だと感じていた。
『 海賊とよばれた男 』の主人公は、実在の人物をモデルにしており、小説の内容もその人物の人生をなぞるように書かれている。

すこし調べると、小説とおなじように活躍していた人物だと知れる。
小説とおなじ行動をとり、おなじ言葉をのべられている。
そして、アカンものには、アカンとしっかりと主張し日本の消費者と民族の誇りををまもった人物だったと知った。
きびしくもあり、やさしくもあり、日本のことをしっかりと守るもののふの魂をもった人物が、戦前戦後の日本にはいたのだな。
いまの日本に、それほどの人物はどれだけいるのやら。

実在の人物だとしった。
物語としては、とてもすぐれた人物だとおもった。
けれども、現実の人物としてとらえるならば、小説だけでなく、彼がおこした行跡を、いろいろな角度から検討したほうがよいだろう。
小説の参考文献が、主人公サイドにかたよっている、そのようにかんじられた。
主人公と敵対した、団体や官僚にもいいぶんがあったのかもしれない。
ただ、いまの日本の官僚の姿をみるかぎり、むかしの官僚もロクなものではなかったのだろうと想像せざるをえない。
小説のなかには、気骨のある官僚と政治家も登場することはする、とつけくわえておく。

さいごに、主人公と部下が21世紀の日本について語っている。
21世紀の日本はどうなっているのでしょうか、とたずねる部下に主人公は、このように答える。

日本人が誇りと自信をもっているかぎり、今以上に素晴らしい国になっておる

引用元:海賊とよばれた男 下巻

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