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『ラッコ 海のエンターテイナー』読了

図書館では児童向けの分類だったけれど、大人でもわかりやすく(そりゃそうか)、ためになる一冊だった。正統なラッコ本
一家に一冊あってもいい、というか普通に欲しい。
読了はしたけれども、気になった時に手に取って読みたい、内容の濃い本。

内容は物語ではなくて、ラッコの生態から日常生活、赤ラ(ラッコの赤ちゃん)、寿命と病気、そして日本で初めてラッコを飼育する前段階の話まで、かなり細かく記されていた。当然実話。

表紙


シービーバー」(シーオッター以外の英名)とか、「エンヒドラ・ルトリス」(Enhydra lutris、ラッコの学名)とかちゃんと書いてあるのが良い。もちろん亜種の英名学名も記載。

ラッコはイタチ科では最大、海獣としては最小、ということだけでなく、その例外についてちゃんと書いてある。(これが書いてないラッコ本もある)
オオカワウソの方がイタチ科としては大きく、マリン・オッター(ミナミウミカワウソ)の方が海獣としては小さい。

他にもラッコの出産についての具体的な記述(陣痛、羊膜、胎盤など)もあって、「この本は本物だ」と思った。


子ラッコって本当にいたずラッコなんだね。擬岩割ったり、好奇心旺盛。他の子ラッコと遊んだり、遊ばない子もいたり。
児童文学の『いたずらラッコのロッコ』の世界線が、あながちユートピアでもなく、リアリティに富むものかもしれないと感じた。

今は子ラッコどうしが遊ぶ機会が水族館では見られないから…。
(霧多布に住んだら見られるかも?)
あ、バン水ライブカメラで見られるか。あれも面白いよな。


生後1ヶ月くらいの赤ラは頑張って潜ろうとするけど浮力で潜れないとかも書いてある、本当にいい本だ。
というか本当に正統なラッコ本。
「あれも書いてある、これも書いてある」ということ自体が失礼だとさえ思う。

というのも、著者の中島将行さんは海獣の専門家。江の島マリンランド(現在の新江ノ島水族館)や、伊豆・三津シーパラダイスの開設を手がけ、出版当時は三津シーの館長だった。
また、シンガポールなど海外に、水族館の企画指導として政府から派遣されるほどの方だ。

三津シーは、1982年に日本で初めてラッコを飼育し始めた水族館として有名(ラコ界隈では)。
そこで飼育されるまでの具体的な経緯・時間・人名なども載ってる。素晴らしい。

1987年5月現在では三津シーにはオス1頭、メス4頭、子ラッコ9頭の計14頭もいた。
全国でも16園館76頭いると書いてある。何だか信じがたい。


「将来は、日本の海べで、ぜひともラッコを、放し飼いにして、自然の中で、かれらが野生の姿そのままに、生き生きと生活し、子どもラッコたちの楽しげに遊ぶようすを、見たいものです。
ラッコたちは、もともとは、日本にいた動物なのですから。」

この文で締めくくられている。何だか胸が熱くなる。著者がもし今の霧多布を見られていたら、どのように思われるのだろう。また、今の水族館のラッコ状況を見たらどう感じられるだろう。


今読んでいるのは図書館で借りた本なので、できるだけ多くのことを手帳にメモしようとしているが、とてもじゃないが終わりそうにない。

やっぱり一家に一冊はあった方がいいな。
復刊してほしい。

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Olivine
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