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マスク着用せず反則負け 日浦八段の言い分

デイリー新潮にマスク不着用で反則負けとなった日浦市郎八段のコメントが長々と載っていました。

■日浦八段の言い分
以下、デイリー新潮の記事を引用します。

「“今回の処分が不当である”との私の思いは揺らいでいません」

「誤解している方も多いのでハッキリと申し上げておきますと、私はルールを破ったから、今回の処分を受けたわけではありません。ルールに従っていたにもかかわらず“ルール違反”のように捉えられ、処分に付された。これまでの経緯を説明すれば、私の話すことに理解いただける部分もあると考えています」

「実は私はこの規定ができるまではマスクを着けずに対局を行い、立会人などに注意された際にはマスクを着用して将棋を指していました。同規定の施行後は、ずっと“鼻出しマスク”で対局に臨んでいましたが、特に問題視されたことはなかった。実際、規定には“鼻出しは禁ずる”といった言葉はありませんから、違反行為と見なされていなかった証左と考えています」

「(今年1月10日の)対局が始まってすぐ、相手から“マスクを鼻まで上げてもらえますか?”との申し入れがあったのですが、私は“そんなルールはないです”と言って断りました。すると相手は対局室から出て行き、その後、立会人が来て再び“マスクを鼻まで上げるよう”に要請しましたが、私は“ルールにない”との理由でやはり拒否。次に立会人は別のフロアにある事務局まで来るよう言うので行くと、そこに連盟理事の一人がいた。その理事が私に“鼻を出しているのはマスクをしていないのと同じことだ。われわれ理事会はこれから『マスクで鼻までふさぐ』といった規定も盛り込むつもりだ”と言ったのです」

「この理事の言葉からも分かるとおり、そもそも同規定は細かな部分は何も明文化しておらず、きちんとしたガイドラインの体をなしていません。色々な解釈の余地が入り込むルールでは恣意的な運用が行われる可能性があり、棋士に厳罰を科す規定としては大いに問題です。私はこの時の反則負けを“このまま受け入れるような形で終わりにするのは間違っている”と強く感じたので、その後の対局でも“鼻出しマスク”で臨みました」

「私がなぜ“鼻出しマスク”で対局に臨むかといえば、マスクに感染予防効果はないと考えているためです。もともと私は科学的なことを調べるのが好きで、コロナ禍が始まってから関連する文献や論文などを読み込んできました。そのうち、エアロゾル感染するコロナに対してマスクの感染予防効果がどれほどあるかについて懐疑的な研究結果を目にするようになった。あるいは長時間のマスク着用が酸素欠乏症を招き、脳に良くない影響を与える可能性を指摘した論文や記事なども読みました。要はマスク着用のメリット・デメリットについて、自分なりに勉強して科学的な根拠を調べたのです」

「理事会側は私を“反マスクの陰謀論者”のように扱って、まともな議論は叶いませんでした。将棋の対局時間は長ければ12時間にも及び、その間、棋士はずっとマスクの着用を義務付けられる。これは私にはかなりの苦痛で、実際にマスクを着け続けることで集中力も途切れやすくなりました。だからこそ科学的根拠の薄弱な規定であれば、もう少し柔軟な運用や改定を行うべき。でも理事会側は私の問いに何ら答えず、懲戒処分という強権を発動して、この問題に終止符を打とうとした――と私の目には映るのです」

引用終了


■やはり問題のある規定と言える
個人的に、この臨時対局規定は問題のある規定ではないかと思います。理由は以前の記事でも述べているように、恣意的な運用が可能になるからです。

佐藤天彦九段の時に、連盟はこの規定の正当性を述べていました。その主張は、「濃厚接触者が出た場合、運営をはじめ将棋愛好家・協賛者・主催者等にも多大な影響を与える怖れがあるため臨時対局規定を制定した。昨今の第8波の影響を考えれば、この規定が直ちに相当性を欠くとは言えない。」というものですが、それはその通りだと思います。

しかし、問題はこの臨時対局規定を制定した背景や正当性ではなく、この規定の解釈や運用に誤りがあることです。その点については日浦八段の言い分は決して間違っているものではありません。

彼が言う「同規定には“鼻出しは禁ずる”といった言葉はなく、同規定の施行後もずっと“鼻出しマスク”で対局に臨んでいたが、特に問題視されたことはなかった。」という主張が正しいとすれば、なぜ1月10日から突然“鼻出しマスク”がマスク不着用とされたのでしょうか。その理由、あるいはそうした日浦八段の主張について連盟は説明するべきではないでしょうか。

昨年10月28日にマスク不着用で反則負けとなった佐藤天彦九段が同11月1日に不服申立書を提出し、その裁定が1月13日に発表されています。仮に規定を厳しく適用し始めた理由がこの裁定の中身によるものであれば、
この臨時対局規定は恣意的に運用されていることになりますが、それについての説明も必要でしょう。

また、日浦八段は「連盟理事が鼻を出しているのはマスクをしていないのと同じこと。われわれ理事会はこれから『マスクで鼻までふさぐ』といった規定も盛り込むつもりだと言った」と主張しています。この発言も正しいとすれば、連盟理事自らが規定の解釈について議論の余地があると言っているのと同じです。「マスクの着用を義務付ける」という規定では、口を覆っていれば良いと解釈できますからね。

せめて「原則としてマスクを正しく着用しなければならない」という内容であれば、「正しく=鼻まで覆う」として連盟の言い分は正当性がある可能性がありますが、鼻を出さないのが常識で言わなくても分かるだろうという言い分ではその常識が正しいとは言い切れませんし、現にマスクの着用を求める施設においても鼻出しマスクを注意されないケースは多々あります。こうした他力本願の「察してちゃん」で運用したためこうした問題が出てきたのではないでしょうか。

だいたい、「われわれ理事会はこれから『マスクで鼻までふさぐ』といった規定も盛り込むつもりだ」なんて後出しもいいとこですし、だったら最初からやっとけよと思いますし、その文言を入れたから連盟の主張に正当性があるというならその文言がない今は連盟の主張に正当性ないんじゃね?と思いますよね。


■まとめ
佐藤九段の時には連盟の対応は良かったと思いますが、その後の連盟の対応は疑問符が付くものばかり目に付きます。臨時対局規定自体に解釈の余地のある規定であることは連盟理事の発言からも分かりますし、連盟HPには抄録の規定しか載せていませんし、人によって即反則負けにならず注意・警告がある点についてもコメントが無いままです。臨時対局規定の第3条にある「但し、この反則負けには、同条第1項及び第3項は適用しない。(即反則負けにしない)」についても説明が欲しいところですね。

ともかく、連盟は佐藤九段の不服申立にパワーを使い過ぎて、日浦八段に対応する余力が無いように見えますね。面倒くせぇから強権発動で黙らせるなんて組織として悪手以外の何物でもありません。ここまで何度もニュースになり、ついに週刊誌にまで取り上げられたわけですから、連盟にはしっかりと対応して欲しいですね。

なお、私はマスク感染予防効果に疑問があるとか、自分で科学的な根拠を調べたとか、マスクを着け続けることで集中力も途切れやすくなったとか、抗議の意味で“鼻出しマスク”を続けたなどの日浦八段の主張や行動は容認していません。連盟の対応に問題があると思っているだけです。規則は恣意性が介入せずに運用できるものであるのが望ましいですし、条文に載せられないのであれば通達という形で補則を設ければいいだけの話だと思っています。そんな簡単なことをできない将棋連盟が残念で仕方ありません。


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