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マスク着用せず反則負け 最悪の形に

対局中にマスクを着用せずに反則負けを繰り返した日浦市郎八段について、日本将棋連盟は3ヵ月の対局停止処分を下しました。

日浦八段は、1/10の順位戦C級、2/1の棋王戦予選、2/7の順位戦C級において、マスクを着用していたものの、いずれも鼻を出した状態で対局に臨んでおり、立会人から複数回の注意、警告を受けたにもかかわらず、是正する事が無かったため、臨時対局規定に基づき、反則負けとなっていました。

■連盟の発表

「当連盟は、日浦八段が公式棋戦において昨今3局連続して立会人の裁定と処置に従わず、臨時対局規定に基づいた反則負けを繰り返した事実を重く受け止め、直近の対局である2月7日の反則負け裁定後、速やかに規定に則って倫理委員会を招集しました。

 2月8日に開催された倫理委員会においては、上記行動を繰り返す日浦八段への懲戒処分の要否及び相当性が検討され、日浦八段への弁明機会の付与を経て、同委員会より当連盟理事会宛に本件に関する答申書が提出されました。

 本答申書の提出を受けて、当連盟では2月10日に臨時の理事会を開催し、以下の内容を決議しました。

 決議事項

 日浦八段は、立会人の裁定及び処置に従わず、実質的な対局放棄を繰り返しており、倫理懲戒規程に基づき、対局停止3カ月の懲戒処分とする。

 日浦八段の行動は、臨時対局規定第1条(マスクの着用義務)、対局規定第3章第9条第3項(立会人の裁定及び処置に従う義務)、対局規定第2章第1条(棋士の公務)に違反し、倫理懲戒規程第5条1項1号(本連盟の目的に反する行為をしたとき)、同5号(会員規程8条、本規程その他本連盟の諸規定に違反したとき)に該当する。

 処分効力期間は令和5年2月13日より令和5年5月12日までとする。

 対局中のマスク着用義務の有無については議論があるところ、当連盟としては、所属する棋士・女流棋士には、高い公共性を求められる公益法人として政府の方針・基準に則った対応をする旨を定例報告会の場等で十分示してきました。ここへきて、政府よりマスク着用の緩和方針が示されつつありますので、最新情報を見極め、臨時対局規定の改善や改廃について引き続き適切に判断して参ります。」


■決議事項に関する違和感

まず、前提として初めてマスク不着用による反則負けとなった佐藤天彦九段とは意味合いが違います。佐藤九段は意図せず規則に抵触したのであって、日浦八段は意図的に規則に抵触しており、悪質といえば悪質ですし、処分されても弁明の余地はないでしょう。一方、連盟の対応も佐藤九段の時と異なり、私には強い違和感があります。

まず、臨時対局規定第1条のマスク着用義務について、棋士からすれば後出しじゃんけんではないでしょうか。1条ではマスクの着用を義務化しているのであって、どのように着用するかは曖昧なままです。中には「マスクを鼻まで覆うのは常識だ」という人もいれば、「マスク着用を求める場所でも、鼻を出して着用していても何も言われない。マスク着用を求めること自体が形骸化しており、多少鼻が出ていても着用は着用だろう」という人もいます。

前回の記事でも書いたように、そもそも臨時対局規定に「マスクを正しく着用しなければならない。」と書いておけば良かった話で、不織布のマスクを着用しろとしか書かなければ、こうした問題が出てくるのは予想できたハズです。現に、コロナが流行り始めてから鼻マスク、顎マスクでやいのやいの言われる事案は著名人がSNS上で発信してニュースになるのを頻繁に目にしました。そうした部分を明確にしなかった点は連盟の落ち度だと私は思います。

それから、対局規定第3章第9条第3項(立会人の裁定及び処置に従う義務)、対局規定第2章第1条(棋士の公務)に違反し、倫理懲戒規程第5条1項1号(本連盟の目的に反する行為をしたとき)、同5号(会員規程8条、本規程その他本連盟の諸規定に違反したとき)に該当するとの事ですが、それについての情報公開がありません。

連盟HPにはこうした対局規定が記載されていますが、これは(抄録)であり、連盟が必要と認める部分しか記載されていませんし、ニュースリリース内でも条文を確認することができませんでした。これでは連盟が処分の対象となった条文を検証することができず、連盟の言い分のみが一方的に発信されることになります。

そして、他のいくつか記事でも取り上げたように、佐藤九段と日浦八段の対応が異なる点が非常に違和感を感じます。両者ともに犯した違反は同じですし、反則負けという処分も同じです。先に述べたように過失と故意の違い、反則行為を故意に繰り返した点はあるものの、佐藤九段に対しては注意警告なしで即失格だったのに対し、日浦八段に対しては3度の失格のいずれにおいても再三にわたる注意・警告がなされていた上での失格であった点は、規則を遵守しなければならない組織として大きな問題です。

これでは規則を守らせる組織が、恣意的に規則を運用していることになりますし、こうした反則事項について立会人の判断一つで勝敗を操作することも可能となり、それは八百長を疑われることにも繋がります。これは連盟が言う「高い公共性を求められる公益法人として」の対応としては不適切ではないでしょうか。

弁護士に相談して規則を持ち出し、処分するのは結構ですが、そもそも素人の外部の人間にこれってどうなの?と普通に疑問に持たれる状況に、連盟は何ら対処をしない点が不思議です。また、マスメディアについても、佐藤九段との違いをしっかりと精査し、疑問が残る点を取材して明確にし報道することは公益性のある行為だと思いますが・・・今のメディアじゃ無理なのでしょうか。


■まとめ
連盟としての対応は決して悪いものではなく、規則に則って粛々と対応したように感じます。しかし、その規則の運用については適切とは言い難いものがあります。ましてや自らが高い公共性を求められる公益法人だと言う以上は、疑問を抱かれることのないよう、最大限、詳らかに開示していくことが大切だと思います。


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