悟りへの珍道中:迷える子羊へのエール
親愛なる迷える子羊よ、
秋風が心地よく頬を撫でる今日この頃、いかがお過ごしかな?
さて、先日、わしは托鉢の帰り道、一匹の猫と出会った。
その猫、丸々と太って毛並みもツヤツヤ。いかにも幸せそうな猫だったんじゃが、一心にトンボを追いかけておった。
トンボはひらひらと舞い、猫はそれを捕まえようと必死。しかし、トンボは軽やかに猫の頭上を飛び越え、猫は空振り。
その様子を見ておったら、ふと、わしらは猫と同じではないかと思ったんじゃ。
欲望というトンボを追いかけ、一喜一憂し、疲弊していく。
しかし、トンボは決して捕まえられん。なぜなら、トンボは外にあるのではなく、心の内にあるからじゃ。
欲望を手放し、心を静めること。それが悟りへの第一歩。
そうは言うても、欲望を手放すのは容易ではないじゃろう。
わしも若い頃は、甘いものを見ると目がない、食いしん坊の修行僧じゃった。
ある日、師匠から「明日から甘いものは一切禁止じゃ」と言われた時、わしは目の前が真っ暗になったもんじゃ。
しかし、いざ甘いものを断ってみると、最初は辛かったが、次第に心が落ち着き、集中力が増していくのを感じた。
そして、甘いものへの執着が薄れていくにつれ、他のことにも感謝の気持ちが芽生えてきたんじゃ。
わしの体験から言えることは、欲望を手放すことは、決して苦行ではないということ。
それは、心を自由にし、新たな喜びを発見する旅の始まりなんじゃ。
だから、焦らず、ゆっくりと、自分自身のペースで進んでいくが良い。
もし、道に迷ったら、いつでもわしに相談するが良い。
わしは、いつもここで、君のことを見守っておる。
合掌
令和五年九月二日
古刹の住職より
追伸
わしは今でも甘いものが好きじゃ。
ただし、以前のように執着することはなくなった。
今では、お茶請けの和菓子を、一口一口、じっくりと味わって食べるんじゃ。
これもまた、悟りの境地と言えるじゃろうな。
ははは。
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