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ショートストーリー 「サンタは宇宙船でやってきた」



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1. クリスマスの夜の異変


12月24日の夜。雪がしんしんと降り積もる町で、少年リクはいつものように窓際でサンタを待っていた。しかし今年は、いつもと違う奇妙なことが起きていた。空から眩い光が降り注ぎ、彼の家の裏庭に何かが降り立ったのだ。


リクは慌ててコートを羽織り、雪を踏みしめながら庭へ向かった。そこにあったのは巨大な宇宙船。まるでクリスマスツリーのようにキラキラと輝き、赤と緑の光を放っている。驚きのあまり口が開いたままのリクの前に、小柄な男が現れた。


「おや、見つかってしまったか。君、早く家に戻りなさい。これは少し…地球では理解しづらいものだからな。」


その男は白い髭を生やし、赤いスーツを身にまとっている。リクは震える声で尋ねた。


「もしかして…サンタさん?」


サンタらしき男は困ったように笑った。「正確には、サンタ星人第27代目『ニクラス27』だ。地球の子供たちにはただのサンタとして知られているが、我々はクリスマスを担当する宇宙種族なのだ。」


リクは信じられなかった。けれど、その宇宙船と目の前の男の雰囲気に嘘偽りは感じられなかった。



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2. 宇宙船へ乗り込む


「ところで君、助けてほしいことがあるんだ。」

ニクラス27はリクの肩に手を置いた。


「助けるって、どういうこと?」

「プレゼント配達だよ。今年はちょっとトラブルがあってね。宇宙船のナビゲーションシステムが故障して、地球の子供たち全員の住所を見失ってしまったんだ。困ったことに、このままだとクリスマスが台無しになってしまう。」


リクは目を見開いた。「それは大変じゃないか!どうすればいいんだ?」

「君の助けが必要なんだよ、リク。地球の文化や地理に詳しい子供なら、私を導いてくれると思ってね。」


サンタがリクの名前を知っていることに驚きつつも、リクは頷いた。「やるよ!僕が助ける!」


宇宙船に乗り込むと、リクは驚きの連続だった。壁一面には子供たちの名前と欲しいプレゼントのリストが投影され、船内の中央にはプレゼントを瞬時に生成する機械が設置されていた。


「これが、プレゼント配達専用の宇宙船『スレイMK27』だ。凄いだろう?」

「うん…凄いどころじゃない!」リクは目を輝かせた。



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3. 配達の旅が始まる


宇宙船は音もなく空を駆け抜け、次々と子供たちの家に到着した。サンタがリクに指示を出し、リクは地球の地図を頼りに正確な住所を導く。プレゼント生成装置から出てくるのは、ぴったりと子供たちの欲しいものに合ったギフトだ。


しかし問題は、宇宙船が壊れかけていることだった。移動するたびに奇妙な振動が走り、煙が少しずつ漏れてくる。


「大丈夫なの?」リクが不安そうに聞くと、ニクラス27は苦笑いを浮かべた。「正直に言うと、限界が近い。でも、全員に届けるまでは止まらないさ。」



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4. 宇宙でのピンチ


すべての配達が順調に進んでいたかに見えた。しかし最後のエリアに差し掛かった時、別の宇宙船が現れた。それは「サンタ星人」に反感を持つ「グリンチ族」の宇宙船だった。彼らはクリスマスを嫌う種族で、プレゼント配達を妨害することを目的としていた。


「侵入者だ!追い払え!」

リクが叫ぶと、ニクラス27は操作パネルを叩いた。「攻撃はできないが、逃げることはできる!」


宇宙船同士の追跡が始まり、光の矢がスレイMK27をかすめる。リクは震えながらも必死に考えた。「プレゼントを無事に届ける方法は…」


その時、リクの目に「大量配送モード」のボタンが映った。「これだ!」

ボタンを押すと、プレゼント生成装置がフル稼働し、宇宙船全体から無数のギフトが放たれた。それがまるで光の花火のようにグリンチ族の宇宙船を包み込む。


「これは何だ!?眩しすぎる!」

グリンチ族は視界を失い、退散していった。



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5. 最後の配達


「やったな、リク!君のおかげだ!」

ニクラス27は笑いながら肩を叩いた。


「でも、最後の家が残ってるんだろ?」リクは地図を指差した。「ここに急ごう!」

そこは町の端にある古びた家だった。スレイMK27が着陸し、リクとサンタがプレゼントを届けると、中から小さな子供が出てきた。


「ありがとう、サンタさん!」子供の笑顔が光に包まれるようだった。



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6. 別れの時


すべての配達が終わり、宇宙船は再び空へと舞い上がった。ニクラス27はリクに言った。


「リク、君の助けがなければ今年のクリスマスは失敗に終わっていた。ありがとう。」

「僕の方こそ…最高の夜だったよ!」リクは目を輝かせながら答えた。


宇宙船が次第に加速し、地球を後にする時、ニクラス27が振り返った。「またいつか会おう。クリスマスの奇跡が君のもとに訪れる限り。」



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7. エピローグ


翌朝、リクが目を覚ますと、昨夜の出来事が夢だったかのように感じられた。しかし、窓際には宇宙船の部品のような光る金属片が置かれていた。


「やっぱり夢じゃなかったんだ…」

そう呟くリクの顔には、クリスマスの奇跡を知った者だけが持つ、特別な笑顔が浮かんでいた。



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テーマ


人間と宇宙人の絆を通じて、「与えること」の大切さを描く。


少年の冒険を通じて、クリスマスの本当の意味を探る。




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サンタと銀河の秘密


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