タイトル:「星間列車の消失」
プロローグ
近未来、人類は星々を結ぶ「星間列車」で銀河を自由に行き来していた。その中でも特に名高いのが「サザン・クロス号」と呼ばれる豪華列車だ。サザン・クロス号は、惑星連合の特別航路を独占し、唯一「クルーゾン星雲」を経由する定期便として知られていた。クルーゾン星雲は、銀河でも特異な重力異常が発生する危険地帯とされているが、このルートを走る列車には優れた防衛システムと精鋭のクルーが揃い、何度も困難を乗り越えてきた。
第一章:密室の謎
ある日、惑星連合の要人が複数人乗車する航海中に事件は起きる。サザン・クロス号がクルーゾン星雲を通過している最中、列車は突如異常に包まれ、乗客のひとりが部屋の中で密室状態のまま消失する。消えたのは、惑星サードナの影響力ある実業家であるエルバート・クロウ卿だった。彼は全身を特殊な金属で固めた部屋に保護され、護衛もついていたため、物理的に「消える」ことは不可能なはずだった。
サザン・クロス号の乗客にはさまざまな人々がいた。エルバート卿の助手、軍事技術の専門家、謎めいた占星術師、連合政府の秘密捜査官、そして宇宙物理学の権威である科学者。しかし、彼ら全員に共通するのは、「エルバート卿に対する何らかの敵意」が潜んでいたことだ。乗客は徐々に不安と疑念に包まれ、互いに牽制し合うようになる。
第二章:探偵の登場
事件に気づいたのは、偶然乗り合わせていた宇宙探偵の「リアナ・アストラ」だった。銀河一の頭脳と評される彼女は、エレガントな身のこなしと冷静沈着な態度で知られ、すでに数々の事件を解決してきた人物だ。リアナは、異常事態の中で冷静さを保ちつつ、列車の運行記録や防犯カメラの映像を確認し、他の乗客から証言を集め始める。
「誰も出入りできない密室で、どうやってエルバート卿が消えたのか……?」
リアナは、列車内に仕掛けられた異次元空間への「転送装置」が原因かと疑い、列車の構造や重力異常の影響を調査する。しかし、すべてのシステムは正常に稼働しており、異次元へ移動する仕掛けがどこにもないことが判明する。疑念はさらに深まり、乗客たちも一様に不安と恐怖を感じ始める。
第三章:消えた理由
事件が進展しない中、リアナは乗客全員の過去を調べ上げ、エルバート卿がそれぞれの乗客に対して何らかの「裏切り」行為をしていたことを突き止める。彼は様々な惑星で事業を行う傍ら、政財界を操り、他者を犠牲にして巨万の富を得ていた。リアナは、乗客たち全員に彼がいなくなる理由があったことを知るが、だからといって彼を物理的に「消す」方法がないままでいた。
リアナはついにクルーゾン星雲の重力異常が、この事件に関与しているのではないかと推理を進める。重力異常が引き起こす「時間と空間のゆがみ」が、列車内の空間に何らかの影響を与えている可能性が高まってきたのだ。彼女は、エルバート卿が列車内で消えたのではなく、「別の時空へ転送された」のではないかと考え始める。
第四章:時空の罠
リアナは列車の技術者と協力し、クルーゾン星雲で起こりうる時間と空間のゆがみについて、さらに詳細なデータを解析する。重力異常が特定の空間を圧縮し、「影の空間」を作り出していることを突き止める。その空間に飲み込まれると、物理的には同じ場所にいるように見えながらも、異なる次元に隔離されてしまうのだ。
エルバート卿はまさにこの「影の空間」に捕らわれたのだった。リアナは巧妙に配置された装置が、重力異常に合わせて影の空間を生み出す役割を果たしていたことを発見する。つまり、犯人はこの特殊装置を使い、エルバート卿を影の空間へと転送したのである。
リアナは乗客の中に仕掛けを操った真犯人がいると確信する。そして、真犯人が影の空間を生成し、密室状態でエルバート卿をそこに封じ込めた手順を次々と明かしていく。
第五章:真犯人の告白
リアナが全員を集め、犯人が浮かび上がるように話を進める中、ついに真犯人が名乗り出る。真犯人は、かつてエルバート卿によって破産に追い込まれた企業の元代表だった。彼は自分の過去をすべて失った復讐のため、エルバート卿がクルーゾン星雲を通過するタイミングで影の空間に閉じ込める計画を練っていたのだ。
犯人はこう告白する。「エルバート卿は、自分の利益のために多くの人々を犠牲にしてきた。それが彼の“罪”なら、宇宙の“闇”に閉じ込められるべきだと思ったんだ……」
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