コンメディア・デッラルテと、他の舞台芸術との違い
こんにちは。芸能事務所 トゥインクル・コーポレーション所属 パントマイムアーティストの織辺真智子です。
前回ご紹介しました16世紀に生まれた舞台芸術、コンメディア・デッラルテ。イタリア生まれの仮面を被った喜劇と、パントマイム、コメディ、演劇、クラウンはどう違っていたのでしょうか。その秘密を、一緒に解き明かしていきましょう!
即興の達人たち:舞台上の綱渡り
コンメディア・デッラルテの最大の特徴は、その驚くべき即興性です。役者たちは、基本的なプロットの枠組み(カノヴァッチョ)に基づきながら、その場で台詞やアクションを即興で生み出します。観客の反応を見ながら、臨機応変に演技を変えていくので、毎回の公演が新鮮で、ライブ感満載!そう、コンメディア・デッラルテは喋るし、身体表現もバリバリするのです。
一方、パントマイムは言葉を使わないでストーリーを表現いたします。即興性がある場合もありますし、ない場合もあります。即興性がある場合も、観客の反応を見ながら細かな動きを調整する感じで、大筋からは外れていかないことが多いです。
コメディや一般的な演劇は、通常、書かれた台本に基づいて演じられますが、俳優の解釈や観客との相互作用により、微妙な変化が生まれることがあります。
クラウンは、コンメディア・デッラルテに次いで高い即興性を持ち、特にストリートパフォーマンスでは、観客との直接的なやり取りを通じて、その場で演技を創り出すことがあります。
表情の魔法:マスクとメイクの世界
コンメディア・デッラルテの役者たちは、個性豊かなマスクを身につけます。アルレッキーノ、パンタローネ、コロンビーナなど、それぞれのキャラクターに合わせ、特徴的なマスクが用意されています。これらのマスクは、キャラクターの性格や背景を視覚的に示し、観客の想像力を刺激します。仮面はいわゆるキャラクターを表現するアイコン的な感じといえましょう。
マイムは、マスクも使用することがありますが、白塗りがイメージですよね。シンプルに、表情と身体の動きのみで多様なキャラクターを表現するのが特徴です。
コメディや一般的な演劇では、メイクや衣装でキャラクターを表現しますが、コンメディア・デッラルテほど固定化されたキャラクターは使用しません。
クラウンは、赤い鼻や特徴的なメイクでキャラクターを作り出し、「ホワイトフェイス」や「オーガスト」などのタイプがあります。
体で語る、笑いの言語
身体表現は、これらの舞台芸術全てに共通する重要な要素です。コンメディア・デッラルテの役者たちは、アクロバティックな動きやダンスを駆使して、視覚的に楽しませる要素を強調します。まるで、コメディと体操競技を合わせたような感じですね。
マイムは、言葉を使わないため、身体表現がさらに重要です。細かな動作や表情で物語を伝える技術が求められます。
コメディや一般的な演劇も身体表現を用いますが、コンメディア・デッラルテやマイムほど極端ではありません。
クラウンは、コンメディア・デッラルテに近い誇張された身体表現を使いますが、より滑稽さを強調する傾向があります。
笑いの必殺技:ラッツィとギャグ
コンメディア・デッラルテには、「ラッツィ」と呼ばれる特有のコメディ要素があります。これは、特定のキャラクターに関連する定型的な喜劇的場面やギャグ、、いわゆる「お約束」です。ラッツィは観客に親しまれ一体感を生み出し、パフォーマンスをより魅力的にする重要な役割を果たしています。
マイムにも繰り返し使用される視覚的ギャグがありますが、言葉を使わないため、より抽象的な表現となります。コメディには「ギャグ」がありますが、これはラッツィほど固定化されていません。また一般的な演劇では、このような繰り返しの要素は少ない場合の方が多いと思われますが、クラウンのパフォーマンスには、ラッツィに似た繰り返しの要素が見られます。
ジャンルの多様性と社会的役割
コンメディア・デッラルテは、主にコメディを中心としていましたが、その中に恋愛や社会風刺などのテーマを織り込んでいました。当時の社会問題や人間関係を風刺的に描くことで、娯楽性と社会的メッセージを両立させていました。
マイムは、コメディから悲劇、抽象的な表現まで幅広いジャンルをカバーし、言葉の壁を越えた普遍的なメッセージを伝えることができます。コメディは、笑いを通じて社会批評や人間性の探求を行います。一般的な演劇は、最も幅広いジャンルを持ち、社会や人間の深層に迫る表現が可能です。クラウンは、主にコメディを中心としていますが、時には深い感動や社会批評を含むパフォーマンスも行います。
似ているけれどそれぞれの魅力
コンメディア・デッラルテ、マイム、コメディ、演劇、クラウン。各舞台芸術形式は、それぞれの特徴と魅力を持ちながら、時に互いに影響を与え合い、発展してきました。
即興性、身体表現、キャラクターの魅力、社会批評の要素など、これらは時代を超えて人々を魅了し続けています。
さあ、次はこの時期に生まれ、とてもポピュラーに発展を遂げたもう一つの舞台芸術をご紹介いたします。お楽しみに!