2人の祖母
「日本語、分からないのか」
買い物中に聞こえてきた言葉。若い家族連れで、お父さんがお母さんに向けて放ったものだった。普段から言っているのか分からないが、不機嫌そうな表情のまま、夫婦は歩いて行った。家族だから自分の思いをそのままぶつけてしまうのだろうが、こちらまで不快な気分になった。他人を攻撃しようとする人の横顔は、理性を持ったヒトのように見えない。まるで獣のように見えて、見苦しい。
近頃はモラハラという言葉も聞くが、自分が支配しているという考えを持っている人は理解していないのだろう。私も夫に対してよく思う。
母方の祖母、父方の祖母は、全く性格の違う人だった。父方の方は気が強く、祖父とは3回目の結婚だった。最初に結婚した相手の母と仲が悪く、喧嘩になって飛び出してきた話をよく聞いた。祖父は優しい人で、祖母の言いなりになっていた。思うようにやりたい人だった。なので、周りの人の苦労は大きかった。母方の祖母は大人しく、支配的な祖父に毎日のように叱られ、それでも意見することはなく、自分の意見をまったく主張しない印象だった。昔の夫婦は、こういう形だったと私は思っている。2人の祖母は、旦那さんを亡くして20年、30年と生きた。父方の方は、変わらず自由に生きていた。母方の方は、明るくなった印象がある。声を出して笑うのを見て、母が兄弟と顔を合わせて驚いていたほどだ。
人生はいつ終わるか分からないが、長く誰かに支配されていても終わりは来るのだ。亡くした後、一緒にいれてよかったと思う人生も、いいものかもしれない。