王谷晶「ババヤガの夜」感想~内から沸き上がる血湧き肉躍る一冊~
その昔、任侠映画を観たあと、映画館から出てくる人たちが、なんだか自分も強くなったような気分になり肩で風を切って出てくるという都市伝説!?に納得!!
本書の冒頭から、暴力シーンに血湧き肉躍る。
先に言っておきますが、フツーなら暴力描写は苦手です。
でも本書は、血湧き肉躍るのです。(←二回目)
男の金玉は潰せても、犬は殺せない新道依子がかっこいい!
そんな新藤依子は、喧嘩の腕を買われヤクザの親分の娘、尚子の運転者兼ボディーガードになる。
18歳になってもコーヒー☕も飲んだことのなかった、明治や大正時代の美人画から抜け出てきたような古風な美少女の尚子。
まるっきり相反しているように見える二人がやがて...からなるシスターフッド物語。
面白かったーー!!
最近では、女性同士の連帯を意味するシスターフッドについて描かれた作品も多い。
小説なら「らんたん」とか、漫画なら「メタモルフォーゼの縁側」とか。
女であることの生きづらさ、苦痛、一方的に押しつけられる価値観...。
納得してないのに背を向けていたものを、暴力で描いているのが目新しいだけではなく爽快で血湧き肉躍ったよ(←三回目)
新藤依子の自分から喧嘩は売らないが、売ってきたら倍値で買う潔さも好きだが、お嬢様の尚子もいい♡
尚子の変わりゆくヤバさもかっこよくて読みどころ。
そして、読みどころはまだまだある。
『二度読み必至』とあるように仕掛けが用意されている。
日本推理作家協会賞候補作になったのに頷ける叙述的トリックが用意されている。
尚子の母親が長ドスのマサと駆け落ちした過去。
ふたりを追う尚子の父でもある親分。
姿をくらました者。
正と長ドスのマサが交差する。
えぇぇぇーーー!そいうこと!!
またまた血湧き肉躍ったよ(←四回目)
まだまだあるよ、読みどころ。
タイトルから魅かれる「ババヤガ」とはなんだ?
依子と依子の祖母ちゃんとの会話で登場する鬼婆。
「バーバ・ヤーガ」とは、スラブ民話に登場する「妖婆、鬼婆」を意味するようだ。
鬼婆になるほどと頷き、そうだよそうだ。
なりたかったもんね依子、鬼婆に。
そして私も、タフで自由な鬼婆になって肩で風を切って歩るくのだ。
私が私であるために。