錦見映理子「恋愛の発酵と腐敗について」感想~泥沼恋愛話のようでいて、ツーンと酵母の香りがする爽快な一冊~
意図せずに女性の心を掴む、『天然たらし男』っていますよね。
自然な距離感、自然なボディタッチ、来るものは拒まず...。
・とろりとした蜂蜜を載せたスプーンを促され、自然に口にスプーンくわえさせられただけで、その日のうちに年下の男と寝てしまった女。
・男の舌が自分の指を舐めたときの感触を、思い出してみずにはいられない女。
あぁぁぁーーー!
天然たらし男に墜ちてしまった女たち(( ̄▽ ̄;;)ア、ハハハハ…
👩👨<主な登場人物の紹介>
・不倫の恋に破れ、勤めていた会社を辞め、喫茶店を開き、もう二度と同じ轍を踏まないと決めた万里絵。(←天然たらし男に指を舐められキュン♡)
・夫に先立たれ久しぶりの恋の沼に墜ち抜け出せなくなる早苗。(←天然たらし男に蜂蜜スープを食わえさせられ体が緩んでキュン♡)
・仕事においては高い技術を誇り、実直な職人気質な男だが、こと女に関してはだらしない虎之助(←天然たらし男)
・親子ほど年の離れた天然たらし男の妻である伊都子(←発酵したパンのよう驚くほど柔らかく弾力があるので天然たらし男はキュン♡)
🥖🥖
ざっくり語ると、天然たらし男に関係した女たちが最後はシスターフッドを結ぶ物語!?
その過程は、妻ありの天然たらし男にハマってしまうのだから、悪い油で揚げたとんかつを食べて胸やけし、変なゲップが出るくどい味の昼ドラを想像するが、そうではなく、本書は、酸っぱいツーンとした酵母の香りがする。
そう意外と爽やかな読了だったのよ♡
なぜかって...。
恋はするのではなく落ちるものだ(by江國香織「東京タワー」より)
恋沼に墜ちる早苗なんて、まさにこの名言のまんまで、恋に歓喜し苦しみ悶える。
嫌だとは拒否されないのに愛されてはいない寂しさ。
寂しさから会いたい。
もうこのころには、早苗の気持ち沼に読み手もハマっていってる。
早苗、わかるよん♡
会いたいが募り、早苗暴走ーー!
早苗、ちょっと待って!!
体も心も固かった早苗がいい具合に発酵してきたのに発酵が止まらなくなって暴走。
でも暴走するのにドロドロ展開にならない。
天然たらし男の妻、伊都子がいいのよ。
私は伊都子が好き♡
みんなが腐敗しないようコントロールする伊都子の魅力を読んで確認してほしいわ。
そして恋って、やっぱりいいなぁ~
一皮剥けた人たちが清々しくいいなぁ~