戸越銀座を自転車で駆け抜けた
小学生の頃、所属していたサッカーチームで、よく戸越まで自転車で試合をしに行った。
平日に試合があることもあって、学校から帰って来てから、サッカーボールを背負って夕暮れ時の戸越銀座商店街を自転車で駆け抜けた記憶がある。
戸越に行く日はいつも天気が良かったイメージがあり、活気のある商店街を通るのがすごく好きだった。
小学校のサッカーチームでの活動が終わると、しばらく僕は戸越に行く機会がなくなった。次の機会は、大学生になってからのことだった。
やることがなくて暇を持て余し、大崎五反田あたりを自転車でぶらぶらしていたある日、小学生の頃の記憶がふと蘇り、思いつきで戸越まで自転車を走らせたのだ。
戸越銀座の商店街が近づくにつれて、段々といろんなことを思い出した。
レギュラーになれずベンチ要員として試合に向かった虚しさや、良いプレーが続いてたくさん褒められた良い日があったことなど。
それと同時に、全力で日々のサッカーに打ち込んでいた小さい頃の自分と比べて、いまの自分が空虚な生活を送っていることを痛感した。
大学生になったばかりの自分は、目標も打ち込むべきものも、何も見つけることができず、とても辛い時期を過ごしていた。
せっかくきたからと、自転車を止めて何軒か店を出入りしたけれど、気持ちが保たなくて、僕は戸越銀座から引き上げることにした。
それから更に時が経った。
大人になった僕は、サッカー少年だった頃の記憶と、モラトリアム真っ只中の大学生だった頃の記憶を引っ提げて、何度か戸越銀座に足を運んだ。
個人がやっている美味しいご飯屋さんや、買い食いできるお店がたくさんあって、ただただ楽しい街だった。
僕は住む街を選ぶときに、商店街の存在を意識する。今住んでいる街にも、良い商店街がある。
その理由は、実家の徒歩圏内に商店街がある街で育ったことに加えて、自転車で駆け抜けた戸越銀座の存在が大きい。
これからの生活も、夕暮れ時の活気ある商店街がそばにあると嬉しい。
自転車に乗って / never young beach
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