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くつしたに あいた あな
次男の靴下に穴があいていた。
その穴から、人差し指が飛び出していた。
「それ、もう捨てるから、ぬいだあと、洗濯カゴに入れないでね」
そう言ってみたけど、お風呂に入る頃には、忘れているだろうなあ。で、わたしも忘れて、また洗って、しまっちゃうんだろうなあ。
なんて思っていたら、案の定その通りで、また何日か後に、穴あきの靴下をはいている次男を見つけた。
「それ、もう捨てるから、今、ぬいで」
そうしたら、「え。もったいない」と言う。
「まだはけるやん。捨てるの?」
そう言われると、ちょっと、なんだか、その通りで、
「まあ、今日は、それ、はいといたらいいよ。でも、お風呂入る時、洗濯物とは別のところにおいといてよ」
言ってみたけど、忘れるだろう。彼も、わたしも。
で、案の定、また何日か後、次男は、その靴下をはいていた。わたしも、わたしだ。
「ねえ、やめてくれない。それ、はくの」
と、言ったら、「穴があいた靴下の、何がダメなの?」と聞く。
『反論されて、ちゃんと答えられない時は、ゆずる』
というのが、星の数ほどあるモットーの中の一つなので、
「まあいいよ。でも、友達の家に遊びに行く日は、はかないでね」
と、譲歩したら、「あたりまえやろ」と、言い捨てられた。
あ、そうなんや。
でも、ねえ。あたりまえが、でこぼこちゃう?
小学生くらいの、そのアンバランスな感じが、すごく好きだ。だからと言って、ずっとそのままで、いてね。とは、思わないけど、常識バチバチになっちゃう前の、今のかんじ、きみが忘れるとしても、わたしは覚えていたい。
「あー、風通しがええわー」
次男は、きげんよく登校した。
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