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掬えば手には

この本を買ったとき、本屋のレジの店員さんが、まっすぐな目で私を見てきた。たぶん大学生くらいのアルバイトだと思う。キラキラしていた。透き通っていた。昔だったら、この人私のこと好きなのかなとかアホな勘違いをしていたけど、今は、変な空気出してる?なんか顔についてる?服が変?とか私に何か非があるのかと全身をスキャンしてしまう。
その目は嘘がバレそうなくらい、よどんでいなかった。


そうだ、もっと昔はこうやって、人からの視線や人の会話に過剰に反応して疲れていたんだった。


それなのに、いつからだろう?この本のバイト先の店長のように、明らかに機嫌の悪い態度を取ったりしていたのは。


そんな自分がバレるのはまずいと思って、新しい人に出会うときには隠して隠して隠して、変に笑って、楽しい自分を演じていた。たぶんそれもバレてたんだろうなぁ。


それはしなくなった。というかできなくなった?代わりに、通常運転がむすっとしていたんだろう。


自覚はない。職場じゃクールとか言われていたこともあったけど、それはオブラートに包んだ言葉で、本当はピリピリキリキリしたオーラが出まくっていたに違いない。


こわいって言われたこともあった。だけど、こっちは真剣にやってんだよ、って自分を正当化してた。変えようとはしなかった。無理に笑うのなんて無理に決まってる。そう思ってた。



これから自分はどうなっていくのかわからないけど、今まで辿ってきた道、忘れかけていた道を戻っている感覚はある。
予期せぬことも起こるけど、前はこうだったなって忘れていたことを思い出しつつある。

だから、今はこの主人公のような、察してくれる人にスリスリしないで、とことん自分を嫌って、新しい本当の私に出会いたい。


私も、透き通った目、よどみのない目になりたい。


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