おまえ
眠れない夜
新聞配達のバイクが一瞬窓を照らして
逃げていく
枕元の時計の蛍光素材の針…
あと2時間はうとうとできるのにと
遠ざかるバイク音を
うとましく
思う……
ごそごそと起きだす布団
しばらくシーンとしたあと
その息は廊下歩く音に変わっている
隣の部屋に小さな明かり…
髪をとかしてパチンとくくる気配…
ピッピッピッと洗濯機をセットする音
あと追うように短いメロディ
ワンテンポ遅れてホースに水が流れだす 今日の洗剤はどっちだろう
さっきの電子音が どのコースのものだったのか…
どっちでも良いことだが……
トコトコっと台所に足音が移動する 電子ジャーの釜に米がカシャッと放り込まれる 水道のレバーが上げられ 下げられるとウォーターハンマー
米シャシャっと軽く磨ぐ音…
チョロチョロと水捨てられる音…
何度か繰り返される心地よいリズム……
洗米はザルの上で しばしのとき………
俺の まだ判断力ある うとうとは
一瞬本格的なうとうとに陥る…
なにか夢見たような
見ないようなひととき…
ジャーの蓋がパタッと閉められ爽やかな電子音が流れてくる 冷蔵庫の扉開かれ 中の冷気が漏れると 静かだった冷蔵庫はまた頑張ってウィーンとうなり始める 野菜が洗われ きざまれ 雪平に水がはられて ガスコンロがチリチリと火花を散らす…
ボッと点火
間髪入れず換気扇のスイッチが押され
ふぅと一息つくのが 伝わってくる…
パラっと新聞がめくられ
広告がガサッと取り出される
味噌の香ばしい香りと
米炊けてくる つんとした匂いが
こちらに攻め入ってくる……
食器棚から器出す音
限りなく
静か……に近い音
確か昨日はこんな感じの朝だった
今朝は俺の番
食パンを袋から2枚取り出し
トースターへ
ペラっとスライスチーズをのせて
タイマーをひねる
ガラスコップに
野菜ジュースのパックを
ユラユラ振りながら注ぐ
ケトルのスイッチをオンして
カップにインスタントコーヒーを
ひとさじ……
スティックシュガー半分ずつ
3分と待たず ケトルのスイッチは
ぶっきらぼうにパチンと切れる
寝室に目をやると
何か楽しい夢を見てそうな顔
この頃 つい無理ばかりさせている
起きたら何の夢を見ていたのか
聞こうか聞くまいか
あと 何分したら
起こそう…
遅すぎたら
きっとまた
怒られる
ミュートでつけたテレビの
天気予報など
ぼうっと
見てみる…
こんな日は
休みだったら
いいのにと
思う
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#ほろ酔い文学 令和編
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