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レールの物語

退職して随分時間が経つのに良く電車に乗る、とても便利だ。人を選ばず誰でも等しく利用出来る。新橋〜横浜間で最初に敷設されたのは知っている。

明治に新橋〜横浜間の鉄道を敷設してから瞬く間に全国に鉄道が開通する。鉄道を造る技術が無かった日本は明治の貨幣で外国から買った。

貨幣とは人類が初めて手掛けた工業量産品だ。

日銀の貨幣博物館が東京駅から少し歩いたところにある。貨幣の歴史を知ると日本史の知られざる側面を知る。

鋳造された貨幣の見栄えで日本の歴史を見ると意味ある貨幣を鋳造できた時期は奈良期、江戸慶長期、明治期の三時代しかない。

奈良は銅貨 和同開珎、江戸慶長期は金貨 慶長小判、銀貨 匁、明治金貨 円。平安や鎌倉、室町は見る影もない、痛々しい有り様となっている。

奈良は和同開珎という大層立派な貨幣を鋳造したが国家としての実力不足を露呈して以後同じレベルの貨幣を鋳造できなかった。平安は貨幣とは言えない冗談というレベルだ。

平安期の冗談というレベルの銭貨が和同開珎と同じ価値を持つと説明されている、貸し借りと負債のある流通ではそうしないと上手く市場が回らないのを表している、今と同じだ。

室町は宋銭を輸入してやり繰りする有り様。何が問題だったのか分からないが銅を産出する力量と動機に欠けていたと言わざるを得ない。

銅を産出鋳造する技術に欠けていたはずはない。古墳時代は銅鐸、銅矛、銅鏡を造る力があったのに銅を産出し鋳造するスキルは失くしてしまったようだ。

貨幣博物館を見ると一つの法則があると分かる。貨幣は改良されることはなく改悪改鋳を繰り返す。つまり負債を小さくするためだ。そうしないと次の負債を作れない。失われた30年は貨幣価値を高くした政策で負債を小さく出来なかったことに主な原因がある。

大きなローンは小さくならないと次にローンをしようとは思わない。資本主義とは借金主義のことだからだ。


普段何気なく使う鉄道にはレールが要る。この鉄道は明治期に基本になる路線は完成していた。明治から昭和にかけて鉄道が敷設されて今見る鉄道路線が出来てゆく。

鉄道は当時のハイテクノロジーだった。鉄鋼生産でレールと機関車を造り、蒸気機関で駆動させシステムとして鉄道の運行をコントロールしなければならない。

日本の鉄道は定時性、安価、速達性を備えている。明治期日本はまだレールを製造出来なかった。だから外国から買った。

九州鉄道記念館にレールが展示されている。見るとアメリカ製、ベルギー製、ドイツ製のレールが展示されている。

レールの展示


レールは汽船の船底に入れて運んだ。恐らく10〜25mくらいの長さのものを運んだと思う。

東海道、東北、山陽本線は明治34年までに完成している。鉄道路線には2本のレールが要る。複線となれば4本のレールが要る。

3路線で何キロになるか単純な足し算すると合わせて1838Kmになる。単線には掛ける2が必要だ。複線にするにはさらに倍の距離が必要だ。主要な路線だけでもどれだけ膨大な事業か分かる。

日本でレールが造れるようになるのは日清戦争の賠償金で得たお金で官営八幡製鉄所が出来てからだ。この製鉄所は1901年明治34年にレールを造り始めて今に至るまで主力製品はレールだ。

明治期に取り憑かれたようにレールを購入して鉄道を敷設する。戦前までに敷設された路線の恩恵を我々は得ている。

私達は明治の人が敷設した鉄道の定時性、安価、速達性の恩恵を得ている。鉄道路線があるから全体の格差を見え難くしていると思う。

貨幣博物館では明治期の外為レートが不平等に大きく円安だったことが記されている。徳川の金本位制と外国の銀本位制の交換レートが公正に欠けると書かれている。つまり外国からの購入は法外に高く日本が売る方は安値で買われるということだ。

外為レートを知らない日本は上手くやられたのだ。日本の生糸や金は安く買われレールは法外に高い値段で買わされるという訳だ。徳川の埋蔵金もあったか分からないが、あったら海外に安く流出してしまったのだろう。

でも、このとき取り憑かれたように買い続けたレールの鉄道路線が日本の大きな財産になっている。最大の受益者は今の我々だ。

明治の人がしたように今の私達に格差に有用な資産を未来に残せるのだろうか?   

もうアマゾンは四年以上使っていない。搾取のビジネスだと気づいたからだ。アマゾンがしているビジネスはイギリスを覇権国家に押し上げた重商主義そのものだ。重商主義は倫理より利益を優先する。

ダグラス・ラシュコフの言う、人がデジタルによる消耗品とならない世界、格差のない社会作りを考え構築するにはどうしたら良いのか。

考え、考え抜けば答えは見つかるかもしれない。デジタルによる格差是正は誰も考えていないからだ、そこに勝機がある。

noteは意外にいいアプローチの一つな気がする。




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