つまづく
50代の前半で閑職に追いやられてから仕事時間をどう過ごそうか考えていた。時々仕事はするし地方へアポを取り出張をしたり営業として出かけるがそれだけでは埋めきれない時間があった。市場調査に出かけてもいた。
しかし、自分にとって有意義な時間を過ごしたかった。
残されている時間は周りにいる人たちより短いし、さてどうしょう。
空いている時間は美術館を回ることにした。幸い東京にはたくさん美術館がある。
アーティゾン美術館になる前のブリヂストン美術館のお別れ展、東京国立博物館の円空展、東京都立美術館のターナー展、大英博物館展、モネ展、新美術館のアメリカンポップアート展、ルーブル美術館展、東京都現代美術館のマンガのちから展とヘアリボンの少女などを見た。世田谷の静嘉堂美術館へも行った、仕事と称して。
美術館博物館の開催ガイドを見る中で有楽町にある相田みつを美術館を知り見に行くことにした。
書には関心がない。書を見たのは大分前に上司の発案で得意先の人二人と台湾旅行した故宮博物院で見た王羲之の蘭亭序と三筆と言われた空海 高野山開創1200年記念のあべのハルカス美術館展で、大阪出張のついでに見た聾瞽指帰( ろうこしいき )ぐらいだ。
聾瞽指帰は空海が楷書で書いた長大な書で見事に書かれているが最後の方は疲れからかいくつかの字体に乱れが生じていて空海も人間なんだなぁ、と感じられたぐらいだ。
相田みつを美術館で相田みつをの苦闘を見た。初めはごく普通の書体で書いていたものが悪字にしていく。その悪字も数百枚数千枚も書いては捨て、部屋の中は捨て紙の山になっている。もしかしたら誰の目にも触れない苦闘だったかもしれないのに。
美術館には相田みつをの短い紹介映像がある。それを見て少しうるっ、とした。
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