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Q.ホルモン補充療法について③

ホルモン補充療法について①、②がありますのでぜひそちらをご覧いただき、続きをご覧ください。
(ホルモン補充療法について① https://note.mu/olas/n/n22c076fb5761)
(ホルモン補充療法について② https://note.mu/olas/n/n09e5822e3b77)

6.いつまで続けるべきなのか
ガイドライン上は「HRTは継続を制限する一律の年齢は投与期間はない」とされており、いつまで続けるべきなのかの答えは「目的を明確に、リスクの評価を明確に行われることで決定されるべき」とされています。
また早期に閉経したことが理由でHRTを開始したサバイバーは通常閉経がある年齢までは勧める必要がある、とされています。

7.副作用や合併症は?
①HRTを絶対にやってはいけない状態
下記にあげる状態ではHRTに伴い症状を悪くしてしまうためHRTは禁忌とされています。
・重度の活動性肝疾患
・現在乳がんとその既往
・現在子宮内膜がん、低悪性度子宮内膜間質肉腫
・原因不明の不性器出血
・妊娠が疑われる場合
・急性血栓性静脈炎または静脈血栓塞栓症とその既往
・心筋梗塞および冠動脈に動脈硬化性病変の既往
(HRTは血管内皮機能を回復させる効用がありますが、冠動脈にはその効果が期待できないことやすでに動脈硬化が成立した後には無効であることが言われています。むしろ加齢ともにそのリスクを高めてしまうため禁忌となっています。)
・脳卒中の既往
(HRTは脳梗塞の再発率を高めてしまいます)

②HRTを慎重にしなくてはいけない状態
下記の状態では禁忌とまではいかないけれど、症状を悪くしてしまう可能性があるため慎重に投与されるべきと言われています。
・子宮内膜がんの既往
(3、そもそもHRTをやってもいいのかをご参照ください)
・卵巣がんの既往
(3、そもそもHRTをやってもいいのかをご参照ください)
・肥満
・60歳以上または閉経後10年以上の新規投与
・血栓症のリスクを有する場合
・冠攣縮及び微小血管狭心症の既往
・慢性肝疾患
・胆のう炎及び胆石症の既往
・重症の高トリグリセリド血症(HRTは悪玉コレステロールを減らしますが中性脂肪の血中濃度をあげてしまいます。)
・コントロール不良な糖尿病
・コントロール不良な高血圧
・子宮筋腫、子宮内膜症、子宮腺筋症の既往
・片頭痛
・てんかん
・急性ポルフェリン症
・SLE

③静脈血栓塞栓症のリスクについて
静脈血栓塞栓症には深部静脈血栓症と肺塞栓症が含まれます。
経口エストロゲン製剤は肝臓を通過するときに肝臓が反応して血栓をできやすくする凝固活性化、増加しむしろ溶かす役割を果たす線溶系の活性が低下することで血栓ができやすくなります。
高齢であったり、肥満であったり、喫煙をしていた場合、手術や骨折で長期的に動かなった場合、家族に静脈塞栓症の既往がいらっしゃる場合はそのリスクは高くなります。
血栓症は非常に致命的で死に至る可能性がある合併症です。
しかし経皮投与(ジェルやパッチなど)であれば血栓症のリスクはあがらないといった研究結果があります。

④発がんリスクについて
1. 乳がんの発がんリスク
多くのかたがエストロゲン製剤による乳がんの発がんリスクを心配されますがガイドライン上エストロゲン単独療法では乳がんの増加は明らかでないという研究結果があります
2. 卵巣がんの発がんリスク
卵巣がある方はHRTに伴い卵巣がん発症のリスクが40%程度上昇することが言われています。しかし「日本での卵巣がんの年齢調整罹患率は1万人の中で年あたり0.9と非常に少なくHRTのメリットを考慮し慎重に施行するべき」とされています
3. 子宮内膜がんの発がんリスク
子宮がある方はエストロゲン単独製剤を使用することで子宮内膜がんの発症リスクが上昇することが知られており、黄体ホルモンを併用することでそのリスクは抑制されることが分かっています

⑤その他の副作用
1. 性器分泌物、性器出血
起こる可能性がありますが、子宮内膜がんとは区別しないといけませんので定期健診が必要です。
2. 乳房不快感、乳頭痛、乳房痛
エストロゲンの影響です、通常症状は徐々におさまってきます。
3. 悪心、腹痛
こちらも症状は徐々におさまってきます。
4. 外陰膣不快感
5. 片頭痛

さてここまで3記事に分けて解説させていただきました。

今回の記事がひとつのきっかけとなって、
ホルモン補充療法を行うべき人が安心して行うことのできる機会が増え、
エストロゲンがなくなったことで生じる性交痛を含め
多くの症状に対する根本解決となればいいなと思います。

活動、研究資金とさせていただきます。