プロダクトマネージャーは考える葦である
こんにちは!
dely, Inc.のリテールカンパニーというリテーラー向けにプロダクトを提供している事業部でSaaSプロダクトのプロダクトマネージャー (PdM) をしている奥原 (@okutaku0507) といいます。
この記事は「プロダクトマネージャー Advent Calendar 2022」の23日目の投稿です。昨日は安部さん (@abeshow) の「個に迫って見つけた課題が、どうして広く一般的なものだと言い切れるのか」でした。個人の課題を掘っていったら、実はみんな抱えている課題だったということは良くあります。是非、読んでみてください。今年のAdvent Calendarも、どれも学びがある投稿が多く勉強になります。
毎年、長編のnoteを書いていますが、今年は「プロダクトマネージャーは考える葦である」というタイトルで、なぜ人間は学ぶのか、学んだことで本当に成長するのか、どうしてプロダクトマネージャーは学ばなければならないのか、僕はどうやって学んでいるのかということを書きたいと思います。どのくらいの量になるかは、書き始めた現在、定かではありませんので、よろしくお願いいたします。このnoteがプロダクトマネージャーに関わらず、少しでもどなたかの役に立てば幸いです。良いお年を。
人間は考える葦である
「人間は考える葦である」という言葉はどこかで聞いた方があるのではないでしょうか。この言葉は人気マンガ、僕も大好きな「アオアシ」に登場する一条花さんの言葉としての印象が強いです。もし良かったら、読んでみてください。
恥ずかしながら、元々はどなたの言葉なのかを調べますと、17世紀に活躍したブレーズ・パスカルさんの名言であることがわかりました。この言葉の意味を深く考えるというよりも、まさに今回のテーマにぴったりだと思ったので拝借させていただきました。気になる方は調べてみてください。
なぜ、人間は学ぶ必要があるのか
なぜ、僕たちは学ぶ必要があるのでしょうか。この多様性の時代に、その答えは個人に依りますし、さまざまなかと思います。しかしながら、人生の時間、自分の命を使うわけなので、目的を持ちながら学んだ方が結果的には良くなると考えています。つまり、個々の目的によって学ぶが異なるということで、目的はなんでもいいと思います。試験に合格したいとか、なりたい職業があるとか。僕個人は、短期の目的ではなく長期的な目的として自己実現の一つである「プロダクト、インターネットを通して他者の役に立ちたい」ということを掲げています。そのため、必然的に仕事に関係していることを学んでいることが多く、何か課題があって学んでいるというよりか、周辺知識を広く学んでいるため、短期で何かに効いているということは少ないです。まず、そもそもなんで学ぶ、学んでいるのかを考えてみると良いかと思います。
そして、もう一つの理由がアウトプットはインプットに規定されるからだと思います。人間は考える生き物ですが、考える際に使う思考概念は既知の概念の組み合わせだからです。猫を知らない人に猫を想像してみてと頼んだとしても、本来の猫を考えつくことは難しいでしょう。そして、人間はアナロジーを持って思考の幅を広げることができます。つまり、インプットが豊富であれば、考える幅が広がり、結果的にアウトプットも良質なものになる可能性が高まります。しかしながら、インプットが豊富だからといって必ずしもアウトプットが素晴らしいものになるかというとそうでもないのが難しいところで、インプットが正しかったとしても、これまでの経験的なフィードバックによって、異なるアウトプットが導かれるということは多いにあり得ます。
そもそも、学びとは何か
学んだ結果として、何が得られるのでしょうか。もちろん、目的によってまちまちだと思いますが、僕の目的に照らし合わせると、仕事に関係してきます。成長とは何かについて明確に書かれている書籍でおすすめなのが「成長マインドセット」です。
成長マインドセットでは、このアイスバーグの面積を広げることを成長と捉えています。成果の大きさと考えてもいいと思います。見る角度にもよりますし、正解を決めつけるわけではないですが、考えを単純化するために、野球選手の草野球とメジャーリーグのそれとは差があるとしています。ここで注目すべきは、成果という目に見える結果の根底には「意識・想い・人生哲学」が横たわっているということです。つまり、成果に必要な能力やスキルセットを身につけるとは、根底にある思考の部分をアップデートし、面積を大きくしていくことに紐づいています。
この考え方に従えば、学ぶこととは根底にある思考をアップデートし、面積を広げていくことに他ならないと思っています。学ぶことで、行動が変わり、行動が変わることで、スキルが変化し、成果につながっていくというふうに。こじつけているだけに聞こえるかも知れませんが、人間が意図をして行動するためには、判断するための情報が必要なので、情報を仕入れ、自分が今すべきアクションを考えることが大切だと考えています。
才能とは何か
少し話は脱線しますが、よく言われる才能とはなんだと思いますか。この人は才能があるというのは、大人になり仕事をしていれば単純に頭がいいことではないと思われます。
僕が大好きなマンガ「左ききのエレン」で、才能とは、集中力とは何かについて定義づけられています。
つまり、才能 = 集中力の質 = 時間の使い方 = 人生の使い方と考えることができます。
ご存じの通り、この世界は不確実性に溢れています。不確実性とは、正にも負にも振れる可能性のことなのですが、詳しく知りたい方は「最強の教養 不確実性超入門」をご覧ください。不確実性が高い世の中において、仕事人生を通して成果を出していくために必要なことは、再現性を高めることです。再現性の追求こそ、仕事ができる人の定義だと僕は考えています。不確実性が高い中、再現性を高めるというのは、アウトプットに対して行動を柔軟に変化させることであり、状況を見極め、次にすべきことは何か、世の中はどうなっていくのかを何通りも思考することが大切です。いわゆる出たとこ勝負ではないのです。
先ほど、才能とは時間の使い方であると定義しました。よく何事も1万時間は鍛錬が必要と言いますが、例えばプロダクトを創るという再現性を高めるために1万時間学んだとします。真剣に。さすがに、アウトプットの質はある程度は向上していると思われます。あることに1万時間突っ込んだ人のアウトプットを見て「この人は才能があるからできたのだ」と簡単に片付けられるでしょうか。人生の時間は限られています。何に時間を使うべきか、決めることは生きることです。
学びのプロセス
学びの話に戻ります。最初から学び学びと言ってますが、具体的にはどのようなプロセスでしょうか。端的には、理論と実践の繰り返しだと考えています。僕がよく例えているのは、スポーツです。今やYouTubeで豊富なスポーツの理論を学ぶことができます。例えば、水泳の動画を1万時間見たとして、水泳は上手くなるでしょうか。スポーツは体を動かすことが伴ってくるというのはあると思いますが、個人的にはデスクワークにおいても同様だと考えています。いくら理論やフレームワークを勉強したとしても、いざ実践になると思い通りに行かないことはみなさんが経験している通りだと思います。
理論をインプットして、実践にてアウトプットしてアジャストさせていくことで、自分の血肉となっていくと考えています。プロダクトマネージャーは意思決定の数だけ成長するといいます。プロダクト成長のための重要な意思決定にはさまざまな困難がつきまといます。もちろん、戦略や戦術を考えることであったり、ステークホルダーとの調整ごとや、技術的な工数も加味する必要があるため、抑えるべき周辺知識はかなり多いと思います。そういうストレッチする環境こそが実践の場であり、プロダクトマネージャーとしての成長につながっていくと思われます。誰かが意思決定したものを回したり、既定路線をただ進むだけでは、多少自力はつくかもしれませんが、本質的な成長につながっていくと思われます。しかしながら、社会人をしていると常に重要な意思決定の場面に出くわすわけではありません。変化していくことが常なので。しかしながら、自分の可能性の範囲を広げ、例えば、今のTwitterのプロダクトマネージャーなら自分はどうする?と自問して、仮説を立てることは可能です。もちろん、得られる情報には限りや偽りが潜んでいるので、それだけでは本当に正しい仮説は立てられないと思いますが、風通しが良い会社であれば、調べればすぐに情報は得られると思うので、自社の他プロダクトだって、自分が携わっているプロダクトだっていいでしょう。意味のある、自分がメジャーリーグの打席に立っていると本気で考えて素振りをし続けることには意味があります。
いつだって成長できる!
人間は必ず老います。身体的な側面は生き物なので、仕方がないと思いますが、知性はどうでしょうか。「なぜ人と組織は変われないのか ― ハーバード流 自己変革の理論と実践」には、人間はいくつになっても知性の発達ができることが示されています。これは非常に嬉しいことです。個人的には30歳くらいから人間の知性といいますか、固定化された考えは変われないと思ってしまっていたので、非常に心強い研究結果であると思いました。
大人の知性は「環境順応型知性」「自己主導型知性」を経て「自己変容型知性」に至ります。もちろん、段階が上がっていくにつれて、そこに至っている大人の割合が小さくなっていくので、全ての大人が到達できるわけではありません。同書では、各段階を越えていくために個人に依存した免疫が存在するとして「免疫マップ」を用いて説明しています。これ以上の言及は避けるので、気になった方は同書を読んでいただきたいのですが、自分の中にある成長する自分を阻む免疫の存在を認めて、それを乗り越えるステップを踏んでいくことで、大人になっても知性が成長していけるのは朗報だと思いました。
越境学習
続いて、越境学習について紹介します。「越境学習入門」という本を知人に紹介していただき読んだのですが、まさに自分がしてきたことが言語化されていると感じました。同書によると越境学習とは以下で定義されます。
同書では環境的な意味で、ホームとアウェイの行き来という表現をしているのですが、プロダクトマネージャーはこれを経験しているのではないでしょうか。個人的には、能力的な越境もそうだと捉えることができると考えていて、他業種からプロダクトマネージャー、プロダクトマネージャーから他の業種へジョブチェンジすることで、それぞれの職種で経験したことにレバレッジがかかると思います。また、新しいジョブになれば前まで持っていた知識や経験が異質なものとして見えてきて、新しいジョブにおけるものに置き換わっていくとすると、越境学習の本質と同質化していると思います。
そのため、プロダクトマネージャーはその役割にこだわりすぎず、さまざまな経験を経ることで、プロダクトを成長させるという目的に対して、能力や考え方が洗練されてくるのではないかと考えています。さまざまなことにチャレンジし、違和感や憂鬱さを経験するは長期的に見れば非常に良いことです。
アンラーン
「アンラーン」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。越境学習の過程で経験する一種だと捉えてもらってもいいのですが、定義でいうと以下です。詳しくはnoteを書きましたので、併せてご覧いただければと思います。事業の不確実性が高く、転職が当たり前、ジョブチェンジが当たり前の時代においては、このアンラーンという考え方は主流になると信じています。その本質を今から掴んでおくことで、ジョブチェンジした際に最速で新しい環境、職能で成果を出せる助けになると考えています。
プロダクトマネージャーは考える葦である
これまで書いた内容を基にして、最後に本題である「プロダクトマネージャーは考える葦である」について書いておきたいと思います。そもそも、学びとは不確実性に立ち向かう武器である、と考えています。プロダクトマネージャーは不確実性に立ち向かい、わからないものを仮説と検証を繰り返し、プロダクトを成功に導きます。
学びには大きく二種類あると思っています。すでに顕在化した課題について学ぶことと、潜在的なことがらについての学びです。前者は、どのソースからどういう学びを得ればいいのかはわかりやすいと思います。例えば、YouTubeを解説しようと思えば、どこかのYouTuberの人が丁寧に解説してくれていると思います。しかしながら、これから起き得るかもしれないことを今から学ぶことは何をどこから学べばいいのか、モチベーションを保つとしても難しいです。もちろん、時間的な制約もあって、僕のようにひたすらポチるけど積読してしまっているという方も多いのではないでしょうか。周辺知識を息をするように日々学んでいくことは、非常に難しい一方で、例えば通勤の時間には絶対読むなどすれば、合計30分は平日は学べるのではないかと思います。
正直、この潜在化している学びについてのベストプラクティスは持ち合わせていません。そういう学びを日々してないのはモチベーションが低いからだとか怠慢だとか、簡単に片付けてしまうこともできると思いますが、何か良い方法がないか模索していきたいと思います。こうではないかというのをいつの日か言語化できる日を楽しみにしています。
最後に
最後までお読みいただき、ありがとうございました。年末年始、お時間あれば是非紹介した本や記事を読んでみてください。また、おすすめの本を紹介していただけると幸いです。
明日は、pmconfの中の人が記事を書かれるそうです。楽しみですね。では、メリークリスマス。良いお年を。
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