見出し画像

【カリスマの科学】カリスマに隠された5つの真実

「カリスマ」というと「生まれ持った才能!」「凡人が訓練してなれるものではない!」「カリスマは何をやってもうまくいく!」みたいな話をたまに耳にしますが、実は科学的には、

  • ちょっとしたことを意識するだけでカリスマだと評価されるようになる

  • カリスマ性が高すぎると逆にリーダーとして不適格と評価されるようになる

といったところが確認されていたりするんですよ。つまり、

  • 一般に想像されているほどカリスマはすごい人じゃないし、むしろカリスマ性がマイナスに働くこともある

  • また、カリスマ性は後天的に伸ばすことができる「スキル」である

と考えられるわけですね。

というわけで今回は、「カリスマ性のマイナス面」から「手っ取り早くカリスマ性を高く見せるテクニック」まで、カリスマ性に関わる研究をいくつか簡単にまとめていきます!


1. カリスマ性は高すぎても低すぎてもリーダーには向かない~カリスマ性は諸刃の剣

まずは「カリスマ性は高ければ高いほどいいのだ!」っていう説に反論する研究をチェックしてみましょう。

これは米国心理学会の研究(R)で、3つの実験から構成されています。一連の実験では、カリスマの性格特性を測るテストの有効性を確認したのち、約600人のビジネスリーダーを対象に、全員のカリスマ性のスコアと同僚、部下、上司から評価されたリーダーとしての適性を比較しております。その結果、以下のような傾向が確認されました。

  • リーダーのカリスマ性が高まるにつれてリーダーとしての適性の評価も上昇したが、それは一定程度までで、それ以上にカリスマ性のスコアが上昇すると逆にリーダーとしての適性の評価が減少していった。

    つまり、カリスマ性が中程度のリーダーが最もリーダーとしてふさわしいと評価され、それは同僚、部下、上司のいずれのグループからの評価でも同様だった

  • カリスマ性とリーダーとしての適性の関係がマイナスに転じるポイントは適応度、つまりストレスフルな出来事に対処する能力によって調整されていた。

  • カリスマ性の低いリーダーは、戦略性が十分でないためにリーダーとしてふさわしくないと評価され、カリスマ性の高いリーダーは作戦行動が十分でないためにリーダーとしてふさわしくないと評価されていた

  • 予想に反して、カリスマ性に関連する対人関係上の特性はリーダーとしての適正評価に関連していなかった

ということで、結局「高すぎず低すぎずのカリスマ性」を持っている人が一番リーダーにふさわしいと評価されていたわけっすね。

このような中程度のカリスマ性を持つリーダーは、

  • オペレーショナルリーダーシップ:戦術を実行するための詳細を管理し、リソースを集中させ、プロセスをうまくコントロールすることによって目の前のタスクを効率よく達成する能力

  • 戦略的リーダーシップ:組織の長期的なビジョンを効果的に伝え、そのビジョンを共有するように周囲を説得する能力

っていう短期と長期のリーダーシップをバランスよく持っているらしい。カリスマ性が高すぎると戦略的リーダーシップによりすぎて理想を語っているに過ぎないって評価されちゃうし、逆にカリスマ性が低すぎると視野が狭すぎて長期的なビジョンが見えないせいでどっちにしろ「この人についていきたい!」って思ってもらえないわけっすね。

研究チーム曰く、

従来の常識では、カリスマ性の高いリーダーは、傲慢さや自己中心性などの対人的な理由で失敗すると考えられていたが、今回の結果は、対人的な行動よりもビジネスに関連する行動が、リーダーとしての有効性の評価を左右することを示唆している。

とのこと。自分勝手がどうこうというよりも、長期志向と短期志向のバランスがリーダーとしての適性を左右するってのは面白いですよね。

また、この点は才能というよりも日々意識すれば十分改善できるポイントですんで、「目の前のタスクをいかに効率よくこなすか」と「長期的にはどんなビジョンを望んでいるか」ってのをバランスよく共有するべしってのはぜひ覚えておきたいところです。


2. カリスマと評価されたいなら頭のよさよりも頭の回転の速さ

これはちょっと意外かもしれないですけど、言われてみれば納得って人も多いかもしれません。クイーンズランド大学などの研究(R)では、「正答率よりもどのくらい早く反応するかの方がカリスマ性の評価においては大事だぞ!」って結論になってます。

この研究では、カリスマ的リーダー、音楽家等を含む417人を対象に、2つの研究を行っております。全員には知能と性格を測るテストを行ってもらい、さらにそれぞれの友人に「カリスマ性がある」「面白い」「頭の回転が速い」といったカリスマ性に関わる質問に回答してもらって各人のカリスマ性を評価してます。そんで、

  1. 宝石の名前などの一般常識問題30問にできるだけ早く答えてもらう

  2. 点の位置を特定したり、パターンを識別したりする時間制限ありのタスクをできるだけ早くこなしてもらう

っていう課題に挑戦してもらって、カリスマ性とメンタルスピード(頭の回転の速さ)との関係を検討したらしい。その結果をまとめると、

  • 一般知識問題や視覚的なタスクに素早く反応できる人ほど、友人からカリスマ性があると評価されていた

  • この関連性はIQや他の性格特性等を調整してもなお維持された

  • 対立への対処や他人の感情の読み取りといった他の社会的スキルは、タスクへの反応の速さでは予測できなかった

って感じで、タスクへの反応の速さはIQよりも強くカリスマ性を予測できたらしい。つまり、難しい問題の答えを知っていることよりも、短時間で多くのタスクにリアクションをとれる人の方がカリスマだと評価されるわけですな。

このような結果が確認された理由として研究チームは、

  • 反応が早い人は自分の不適切な反応をマスクすることができる

  • その場でユーモラスな連想もしやすいのかも

ってことを想定しておりました。確かにたった一つの回答をうんうん悩んだ末に導き出すよりも想像もしなかった回答をパッと思いついてユーモアで乗り切る人の方がカリスマ性が高く見えるってのはわかる気がしますねー。


3. 有能な上司になるためにはスティーブ・ジョブズのようなカリスマ性は必要ない

続いては、「部下のモチベーションを高めるにはどうすればいいのか?」ってところを調べたミシガン州立大学の研究(R)のお話です。

ここでは、5つの研究シリーズで、専門サービス、製造業、政府など様々な業界の数百人のマネジャーと労働者を対象に調査を行ってまして、おおよその結論をまとめておくとこんな感じになってます。

ここから先は

2,422字

¥ 250

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?