「自然の色をまとう」ブランド立ち上げの舞台裏――「kakikko」(鳥取)
PROJECT NOTE
柿渋染め衣類ブランド「kakikko」(鳥取)
日本の伝統染料「柿渋」を使った衣類ブランド「kakikko」の立ち上げに携わったこのプロジェクトでは、自然素材の温かみと、サステナブルな価値をどのように現代に届けるかが課題となりました。プロジェクト全体を通じて、伝統技術を新しい形で解釈し、ブランドとして具現化する試みは、多くの示唆をもたらしてくれました。この記事では、その過程で得た洞察をお伝えします。
廃棄される素材から生まれる価値
「kakikko」の根幹にあるのは、「柿渋」の再発見です。かつて日本各地で防腐や染料として広く使われてきた柿渋は、現在ではその需要が大幅に減少しています。一方で、柿の摘果材――生産過程で捨てられる未熟な柿――は、全国で大量に廃棄される現状がありました。この廃棄素材を活用し、新たな価値を生み出すことが「kakikko」の起点となりました。
このような視点は、サステナブルなデザインを考える上で重要です。リソースの「無駄」をどのように「資源」に変換するか。その問いを中心に据えることで、デザインの意図が明確になり、製品に説得力を与えることができます。
ブランドの核を見つける
プロジェクト初期にもっとも注力したのは、ブランドの核を見つけることでした。「kakikko」の場合、その核は「自然の色をまとう」というアイデアに行き着きました。柿渋の消臭・抗菌力や、独自の色合いといった機能的な魅力はもちろん重要ですが、それ以上に、この製品を通じて消費者にどのような体験を提供するのかがブランドを形づくる鍵でした。
例えば、柿渋の独特な風合いやその持続可能性を、「自然と調和した暮らしを楽しむ」というストーリーに結びつけることで、製品が単なる日用品以上の価値を持つようになります。ブランド構築では、このような体験価値を軸に据えることで、消費者の心に響くメッセージを作り上げることができます。
デザインの方向性――伝統をモダンに再解釈
ロゴデザインやWebサイトのビジュアルでは、伝統的な要素をモダンに再解釈することを意識しました。例えば、ロゴは「柿の実」を抽象化した形状と、「自然と人のつながり」を象徴する柔らかな曲線を取り入れました。これにより、親しみやすさと新しさを両立させ、伝統染料のイメージを現代的な文脈で捉え直すことができました。
また、Webサイトでは、自然素材の質感や手作業の温かみを伝えるため、写真のトーンやレイアウトにこだわりました。背景には柿渋染めの微妙なグラデーションを取り入れることで、ブランドの特徴を視覚的に強調しています。
デザイナーの役割――「つなぐ力」
「kakikko」のプロジェクトを通じて感じたのは、デザイナーの役割とは「伝統と現代」「素材と消費者」をつなぐ力だということです。廃棄される素材を新たな価値に変え、伝統技術を現代の生活に取り込む。そのためには、素材そのものを深く理解しつつ、それをどのように解釈し直すかという思考の柔軟性が求められます。
地域産業の未来を形づくる
「kakikko」の立ち上げを通じて得たのは、地域資源の持つポテンシャルと、それを活用するためのデザインの力です。単なる製品開発にとどまらず、地域の産業や文化を次世代につなぐプロジェクトは、ものづくりの可能性を広げる重要なステップだと感じています。
最後に
「kakikko」が持つ価値が、地域や社会に新たな風を吹き込むことを願っています。この記事が、ものづくりに携わる皆さんにとって、新しい発想のヒントとなれば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。記事へのスキや、X(@okunote_tokyo)のフォローもぜひお待ちしています。kakikko製品のお求めは以下のリンクから。抗菌・消臭効果のある靴下は長く靴を履かなくてはならない方におすすめです。
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