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自分で育てる自分だけの焼酎「千亀女 THE NEW POT(若潮酒造・鹿児島)」

PROJECT NOTE
千亀女 THE NEW POT(若潮酒造・鹿児島)

若潮酒造様の「千亀女」シリーズ「千亀女 THE NEW POT」のパッケージデザインを担当しました。このプロジェクトは、焼酎の持つ伝統的な魅力を現代のライフスタイルに溶け込ませる試みであり、消費者一人ひとりが「自分だけの焼酎体験」を楽しめるユニークな商品開発でした。

焼酎造りの歴史と革新性をどう伝えるか。プロジェクトの始まりから完成に至るまで、私はデザイナーとして多くの挑戦を経験しました。この記事では、その舞台裏とデザインに込めた思いを振り返ります。


焼酎の新しい価値を形にする

若潮酒造様が手がけた「千亀女」は、同社の手造り蔵「千刻蔵」で作られた特別な芋焼酎です。伝統的なかめ壺仕込みや木樽蒸留器による製法を用い、甘みとコク、そして複雑で繊細な香りを引き出すことに成功しています。

©︎若潮酒造

この焼酎は新酒ということで、時間とともに味が変わっていく特徴があります。それを「育てる楽しみ」として価値を定義づけました。実際に商品としても、自分でラベルを作り、自分だけの焼酎として楽しむ。さらに、時が経つにつれて味わいが深まり、自分と共に成長するお酒を提案しました。

©︎若潮酒造
©︎若潮酒造
©︎若潮酒造

これらの要素をデザインに落とし込むにあたり、焼酎そのものが持つ高級感と親しみやすさを同時に表現することを目指しました。


ラベルに込めた遊び心

©︎若潮酒造

「千亀女」のラベルデザインでは、従来の焼酎とは一線を画したモダンなアプローチを採用しました。筆文字や伝統的な和柄ではなく、シンプルで洗練されたフォントや色彩を用いることで、若い世代にも手に取りやすいデザインを目指しました。

特に裏面に「Make your Original」というメッセージを隠し込みました。このメッセージは、「自分だけの焼酎体験」を楽しむという商品コンセプトを象徴しています。ラベルを消費者自身が貼ることで、ただの購入品ではなく、オリジナルの作品として愛着を持ってもらえる仕掛けを施しました。


見た目と体験をつなぐデザイン

焼酎の高級感を感じさせつつ、親しみやすさも持たせるバランスは、特に意識したポイントです。木樽蒸留やかめ壺仕込みといった伝統的な製法にちなんで、外装パッケージは自然素材の温かみを連想させる質感や色彩を採用しました。

さらに、ラベルの素材にもこだわり、消費者が自分で貼る際の扱いやすさを追求しました。これにより、ラベルを貼る行為そのものが楽しい体験となり、商品への愛着を高めることができました。


新しい焼酎体験の提案

「千亀女」は、焼酎の楽しみ方を広げる商品でもあります。例えば、ラベル作成をきっかけに、友人や家族と一緒に焼酎を楽しむ時間を作る。自分でカスタマイズしたボトルをギフトとして贈るという新しい価値も提供します。

このような商品設計は、焼酎そのものを味わうだけでなく、消費者の生活に特別なひとときを提案します。単なる「もの」ではなく「体験」をデザインする視点が、現代のものづくりにおいて重要だと感じました。


制約が生むデザインの可能性

伝統的な焼酎のイメージが固定化している中で、新しい方向性を示すことは大きな挑戦でした。また、ラベルのカスタマイズという新しい提案には、実用性やデザイン性の両立が求められました。

これらの制約を乗り越える過程で、素材選びや視覚表現における創造性が試されました。制約があるからこそ生まれるアイデア。その可能性に触れたことは、自身のデザイン観をより広げる機会となりました。


デザインが広げる焼酎の未来

「千亀女」は、伝統的な製法を大切にしながらも、新しい飲み方や楽しみ方を提案する商品です。このプロジェクトを通じて、デザインが商品そのものを超えて、消費者と商品をつなぐ体験を作る力を持つことを改めて感じました。

焼酎を通じたコミュニケーションや体験が、これからの生活を豊かに彩る。その可能性を探る挑戦に、私自身が関われたことを光栄に思います。


最後に

「千亀女」は、飲む楽しさだけでなく、自分だけの体験をデザインできる焼酎です。この新しい試みが、多くの方々に愛されるきっかけとなれば幸いです。

若潮酒造様は新しいカテゴリーの焼酎にアグレッシブにチャレンジしている酒蔵の1つですので、ぜひ焼酎好きの方もそうではない方もチェックしてみてください。とっても美味しいお酒ばかりです。

この記事を最後までお読みいただき、ありがとうございます。記事にスキをいただけると励みになります。また、X(@okunote_tokyo)のフォローもぜひ。これからも、デザインを通じて新しい価値を提案していきます。

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