奥野武範

編集職。ほぼ日刊イトイ新聞。

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最近の記事

「あの曲」の、25年の旅。

 いまから20年以上前、大学の友人Kくんと「Ami-taiz」という音楽コンビ(?)を組んでいた。網タイツ。自分がボーカルで、Kくんがギター。それ以外のトラックは打ち込みでつくっていた。いまのようにパソコン1台あれば何でもできる時代ではなく、KORG X3というシンセサイザーのちっちゃい液晶を覗き込むようにしてつくっていた。音符をひとつひとつ‥‥気の遠くなるような手間暇を費やして、つくっていた。徹夜でやっと16小節、みたいなスピードだった。学生時代には、永遠のような時間があっ

    • 彼方に「中森明菜」を見た日。

       歌手・中森明菜の実力は、1989年の春にひとつのピークを迎えている。その年の4月29日・30日に開催された「AKINA EAST LIVE INDEX-XXIII」(通称イーストライブ)を見ればわかる。とにかく圧倒される。「アイドルのコンサート」と言うには、全体に鬼気迫り過ぎている。客席を睥睨する「TATOO」の全能の神感、「飾りじゃないのよ涙は」「禁区」から「北ウイング」へ続くあたりで見せる修羅の表情、身動きとれなくなるほどのシャーマニスティックな歌声、仏のような御尊顔に

      • 『ゴルゴ13』は、なぜ、はごろもフーズとコラボしたのか。

        数年前『ゴルゴ13』とコラボした「オイルサーディン」が、はごろもフーズから発売されたことをご存知でしょうか。当時、いくつかのサイトでおかしげに取り上げられていました。しかし自分は、それらのニュースすべてに、ある種の「消化不良」を感じざるを得ませんでした。なぜなら、そこには「13のレシピが載っているらしいよ!」みたいなことは書いてあったものの、「どうしてゴルゴがオイルサーディンとコラボしたのか?」という肝心の部分が書かれていなかったからです。 そもそもオイルサーディンって、そ

        • 2020年4月24日を忘れないと思う。

          2020年4月24日に発行された自著『インタビューというより、おしゃべり。』には、これまで「ほぼ日刊イトイ新聞」に掲載してきたインタビューの中から13篇を採録している。俳優の柄本明さんや山﨑努さん、映画監督の原一男さん、画家の山口晃さん‥‥などに混じって、大学の恩師・坪井善明先生へのインタビューも入れた。とくに思い入れのあるインタビューなので、われらがキング・窪塚洋介さんよりもあと、本の最終章に置かせていただいた。  自分は、究極的には、インタビュー記事はインタビュー相手さえ