欲望とピザの交差点
満月だ。今夜の月は黄金色である。どうしたことか今日は朝の散歩に出た途中から機嫌がよろしくない。
何か無性に腹が立つ。
どうでもいいことにヘソを曲げてしまいたく自分がいる。ちくしょう!なんてこった。満月なのに。いや、満月だから、こうなのか。
数日前からだと思う。まんまるくなる月を見る度に、ピザを食べたいなぁと思っていた。丸い形だから?
そうではない。
私のなかに未完の欲望が渦巻いているからである。
その欲望を満たす手立てがなくなってしまったせいで、私は二番煎じを選ばざる得ない状況に陥った。これが酷く腹を立てる原因となっている。コロナのせいなのだ。すべては。ことがよくない状況に転換されると一事が万事コロナのせいにしたくなる。
どうして満たされない欲望とはこんなにも気性が荒いのだろう。ピザを食べることで頭がいっぱいで、満たすことができそうもないと知りながら意地になって最良の代替え案を必死に探す。
私が求めている、あのピザ屋は開いていないのだ。このご時世で。なんてことだろう。なんてことに執着しているのだろう。
アホらしさの限界というものを超えた領域で我が欲望は暴れまくる。ピザを求めて三千里。
そして引き寄せの法則があっかんべ〜をするかごとく、行く店、電話する店でことごとく撃沈。開いているのは遠くて行く気も失せる場所のみだ。
最終的にピザにはたどり着いた。もちろん代替え案中の中では最低優先順位である。満月にピザを食べたいがばかりに東奔西走した結果が、満足できぬピザを食す結果となった。
美味しくないピザほど泣きたくなることはない。泣きたい気持ちを堪えるのが必死である。食べ終わって、我が家でこの記事を書きながらも、心は泣いている。
あぁ、欲望とは本当に悲しいほどにパワフルである。
欲望を抑え込もうとするなら、さらなる力で抑え込まれる。抑えずにして暴れるままにしておくと、泣きたくなる。
どうしたらよいものか、我が身に吸い付いて離れない欲望にただひれ伏すばかりである。
明日の夜、また美味しいピザを求めて三千里の旅にでることだけは避けたいと思う今夜であった。
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