いつかの月ひとめぐり #31 靴音
パンを口に咥えたまま、トンカチやらバールのようなものが入った大きめの道具箱をうんしょと持ち上げて、スチール物置の引き戸をバンと閉めた。驚いたスズメが3羽、庭の木から飛び去っていく。空は今日も蒼く澄み渡っていて、もう6月だってのに梅雨入りしそうな気配がない。まぁ作業しやすいからそれでいいんだけど。
「ちょっと毅、朝から大きな音出さないで。近所迷惑じゃないの」
「どこに近所の家があんだよ。最寄りの宅まで歩いて1分かかるんだぞ」
「知ってるわよ、回覧板届けたんだから。ものの例え