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【音楽レビュー】あいみょん/おいしいパスタがあると聞いて

2020年9月リリース。前作から1年7ヶ月ぶりメジャー3作目となるのニューアルバム。

稀代のヒットソング「マリーゴールド」を配した前作からさらなる飛躍が感じられる一枚だと思います。

12曲中5曲がシングルカット、さらに2曲がミュージックビデオが作成されストリーミング配信されており、アルバムオリジナルは5曲。

このような布陣であるためヒットソング集的な色合いが強い印象でありアルバムカラーというのは少し希薄な気もするのですが、まあ今ノっているポップ(というと心外なのかな?ロックと言った方がいいのかしら?)アーティストとしては、まあ当然な作品となったと思います。

ミュージックビデオも作成された作品というのはそのビジュアル効果もあり、増してやドラマやCMのタイアップともなるとその印象が色濃く現れるので良く聞こえがちだと思うのですが、そのうえシングル曲というのは基本的に独立した作品なのでアルバムの中では浮いて聞こえがちということで、アルバムという単位において重要なのはむしろアルバムオリジナル曲にあると考えています。

そういった意味において本作は前作に比べてやや無難な着地を見せていると思いました。よく言えばアルバムカラーが大切にされていて統一感がある。わるく言えばアーティストの本音の声が聞こえてこず面白味が少ない。

前作「瞬間的シックスセンス」において「ら、のはなし」や「二人だけの国」などのひとクセあるがキラリと光る素晴らしい曲がありましたが、本作においてはそのクセは弱めに設定されています。だからといって聞けない曲というのはなくそれぞれに聞き所のあるというのは逆に素晴らしい点だと思います。

アルバム全体を通して白眉なのはやはり「裸の心」。自身初にして現時点で唯一のバラードということもあり他の曲とは決定的にテイストが異なるためアルバムを通して聴いていてもその流れにハッと胸打つものがあります。最高ですね!

個人的にアルバムオリジナル曲で耳を奪われたのは「マシマロ」。エロチックなテーマをそうとは思わせないポップな言葉選びで脳天気にストレートな曲展開は聞いていてスカッとするモノがあります。素晴らしい!と思っていたらアルバムリリース日にミュージックビデオが公開になりましたね。やはりあいみょんサイドもお気に入りの模様。

あいみょんの魅力とは70~80'sのフォークロックを思わせる無骨でレイドバックな歌詞と曲の骨組みでありながら、現代的な歌詞感覚と秀逸なポップな曲のアレンジにあると思うのですが、あいみょんの初期の音源を改めて聴いてみるとかなりトガった歌詞や曲であることに気がつきます。

こういったトガりの傾向は作品を追うごとに薄まっている気がします。これを成熟とみるか世の中に揉まれて丸くなったとみるかは人によると思いますが、今後あいみょんが更なる飛躍を遂げるか「マリーゴールド」ないしは今をピークとして「あのころは良かったね」という存在になるかは今後さらに成熟もしくは丸くなり既定路線を続けるのか、トガりを取り戻すかで違ってくるような気がします。どのように違ってくるかは時代の流れもあるのでちょっとわかりませんが。一つ断りを入れておくと飛躍というのは売れるという意味ではありません。いかに強く人の心を打つ音楽を作れるかです。一時のブームでたくさんの人に聴かれる必要は全くないと思います。まあ良い音楽がたくさんの人に聴かれるというのはとても幸せなことですが、たくさんの人に聴かれるために音楽が薄まるぐらいならたった1人の心を強く打つ音楽を作れるの方がボクは素晴らしいことなんじゃないかと思うのです。あいみょんにはその両立が出来ると信じています。

ちなみにボクの一押しの曲は「真夏の夜の匂いがする」。

なお初回限定CDに付く語り弾き音源はサブスクでは配信されないので是非聴きたいんですが初回限定盤は通常盤に比べて1400円ほど割高なんですよね。これは別のアルバムとして割安で販売した方が良心的だと思うのですが、まあ商売ですからね。この形態の方が儲かるのでしょう。ボクはそのうち中古で買います。

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