雅楽〜チューナーに合わせると、これくらい違う
雅楽はピタゴラス音律なので、一般的なチューナーでは、ぴったり合わないという話をします。
どれくらい合わないか、数字で示しているので、チューナーを見るときお役に立つと嬉しいです。
チューナーにも種類がありますが、ここでは半音ごとに音高が表示される、いわゆるクロマチックチューナーです。
順を追って、できるだけ簡潔に。
音律が違う
音楽で用いる音の、高さの相互関係は、「音律」で決まります。
音律には種類があります。
学校の音楽の時間を通じ、私たちに最もなじみがある(というか、これしかないと無意識に思ってさえいる)のは、「12等分平均律」です。
周波数比が1:2のとき、両音の隔たりを「1オクターブ」と表現します。
ちょうど倍ですので、分かりやすいですね。
人が1オクターブを基に音を考えるのも、うなずけます。
12等分平均律は、1オクターブを均等に12に分けた音律です。
雅楽は、「ピタゴラス音律」です。
1オクターブを12の音に分ける点は12等分平均律と同じですが、均等に分けていません。(どうなっているかは別の機会で)
一般的なチューナーはデフォルトで、12等分平均律に設定されています。
だから、それに合わせると、雅楽とはやや高さが違ってしまいます。
例えば、「勝絶」は「F」と表示されますが、「Fの0」ではありません。「勝絶」は、「Fの-(マイナス)8¢(セント)」です。
*100¢=半音
画像ではこうです。
「F4:341Hz」は、12平均律での周波数を表示しています。雅楽の「4」の音域の勝絶は、340Hzです。
*「A4」「F4」などは国際式音名表記と呼ばれ、数字でオクターブを区別しています。
(スマホアプリ「チューナー&メトロノーム(チューニング・メーター)」提供元:Soundcorset)
ちなみに、「黄鐘=430Hz」だからこのズレが生じる、と思っている人と時々出会いますが、それは勘違いです。基準音の設定ではなく、音律の違いからくるズレです。
では、聞き比べてみましょう。
F5です。(龍笛では和[ふくら]の勝絶)
(A=430Hz設定)
①目盛り「0」の場合 → 12等分平均律
②目盛り「-8」の場合 → これが「勝絶」
雅楽の各音を鳴らした場合の、チューナー表示
その他、雅楽の各音を鳴らした場合、チューナーの表示は下記の通りです(単位は¢)
この表は、筆者が笙の調律手順などを基に算出したものです。”笙と同じ調律“との説明書きがある調子笛の音をチューナーで確かめると、この通りになります(吹き方などにより誤差が生じますが)。
音高よりも音色を重視、との考えも
ただ一方で、雅楽を含め、日本の伝統的な音楽は、音高より音色を重視する考えもあるようです。
「多少の高さのズレは音色でカバーできる」と、私の先生も言っていました。
10セント以内のズレをどこまで重視するかも、人によって考え方はさまざまでしょう。
そういったことを合わせると、ピタゴラス音律を意識することは、音高だけでなく別の意味が見いだせると思います。
そのことは稿を改めることにします。
(「雅楽の音(1)~狭い隣接音、広い隣接音がある」に書きました 2020年5月1日記)
今回は、雅楽をする場合の、チューナーの見方を説明しました。
※「雅楽の各音を鳴らした場合の、チューナー表示」は筆者の算出であることがわかるよう、説明を書き改めました(2020年4月29日)