ホントシオリ vol.06
2019.06.17 LOFTproject RooftopWEB 掲載
梅雨だね。毎日、雨がぽつぽつ。雨って靴下がびちょりと濡れてちょっとブルーなんだけど、公園の緑は土やほこりが洗い流されてすごくキレイな青々した緑になるし、カエルはゲロゲロと大きな声で鳴くし、雨は雨でその時にしか感じられないもの、見れないものがあるから嫌いじゃない。
眠りにつくときには一日の中でおきた嬉しいことをなるべく思い出すようにしてる。
例えば、一日の中ですごく悲しいことがあったとしてもずっと悲しい気持ちじゃなかったと思うの。嫌なときのことを思ったり、考えながら眠っちゃうと次の日も悲しい気持ちになりそうじゃない? もちろん、ひとり反省会もよくするし、時には朝起きたら笑っちゃうほど目がぱんぱんに腫れあがり“すんごくブルーなんだけど!”と、思う日もなくはない。
目覚めたとき、カーテンの隙間から光が差し込んでいるのをベッドの上で感じ、それがとても心地よくて、今日は何が起こるんだろうってわくわくする。洗濯物を干した日に雨が降ってくると本当についてないなとちょっぴりブルーな気持ちになる。公園で遊んでる子どもたちが手を振ってくれたりするときゅんきゅんする。
ずっとずっとハッピーは続かないし、ずっとずっとブルーな日も続かない。毎日の生活はちょっとのハッピーとちょっとのブルーでできてると思っている。
わたしが小学生くらいの頃に「小さなことでも嬉しいな、幸せだなっていっぱい感じるんだよ。相手にしてもらって自分が嬉しいって思ったことは他の人にもしてあげる。独り占めとおこんじょはダメよ。」と、お庭の手入れをしながら祖母がよく言っていた。“ちいさなしあわせ”をみつけるのは決して上手くないんだけど、きっとこうゆんが毎日の生活の中でのちょっとあると幸せなんだろうな、と思える心が穏やかになる作品をご紹介致します。
しりとりってみんなが遊べるけど
大人になるともっともっとおもしろい
益田ミリ「しあわせしりとり」株式会社ミシマ社 / ¥1,620
“しりとり”って、小さい頃に一度はみんなしたことがある遊びだと思うの。“しりとり”っていうわけのわからない言葉から始まって(“しりとり”の起源ってなんなんだろう)、最後の文字を次の人は言葉の最初にしてどんどん数珠つなぎで遊んでいき「ん」がついたらおしまい。いまだに「だ」は「た」に変えてもいいのか、小さい文字で終わる言葉は「しょ」なのか「よ」でもいいのか…大人になった今でもルールをよく理解していない(笑)。
本作品は「オトナになった女子たちへ」という朝日新聞にて連載をしていたエッセイが主軸となっていて、“しりとり”をテーマにしたお話から始まる。
“しりとりって懐かしいな”と思いながら手に取り読んでいたんだけど、たった3ページで“しりとり”のお話が完結してしまう。たった3ページ。見開き左右で1ページと1ページ、次を捲り3ページ目で終わってしまうの。だけど、その“たった3ページ”がわたしの中では「ほほう! なるほどね!」という閃きがあって、“小さい頃にしていたしりとり”と“オトナになった今のしりとり”って、出てくる言葉が全然違うし、瞬時に答えなくちゃいけないから、日頃から自分が思っていること、周りにある言葉が出てくるんだ、って。これを読んでいる時に気付いてからしりとりを友だちと一緒にするとすごく面白かったの! “普段、この子はこんなことを考えているのか!”とか“よくもまあ難しい言葉を知っているのね“みたいに。幼い頃はただの暇つぶしの言葉遊びだったのに、相手を分析する一種の遊びみたいになっている(わたしは、ね。笑)。
読書が苦手な方も本当に数ページでサクッとひとつのお話が読めちゃうので、是非! あとは、口癖が「なんかいいことないかな?」みたいな方はちょっと手に取って! 「なんかいいことないかな?」は本当にいいことないのかな? 実は気付けてないだけで、自分からハッピーを見逃してるんじゃないかな? なんて、本作品を読みながら思っちゃった今日この頃。
毎日の生活の中で些細なことに目を向ける
雲のうえの存在でも同じように「くそして生活はつづく」
星野源「そして生活はつづく」文春文庫 / ¥626
わたしが知ったのは三年前くらいだった。それまでも音楽はもちろん、ラジオをしていることも演劇をしていたことも知ってはいた。けど、そのレベル。すごく失礼な話なんだけど、わたしの中では“知ってはいるけれど、さほど興味がない。”の分類に属していた。
知り合いがとても星野源さんが大好きで、その頃「逃げるは恥だが役に立つ」がテレビドラマ化をしていたこともあり知り合いから『とにかく観てみて!』と強く念を押されたので渋々観てみたら…めちゃくちゃ面白い。純粋に物語も展開が気になるし、星野さんの演じる冴えなくて人間味のない平匡さんはすんなり平匡さんとして入ってきて、毎週火曜日が楽しみになっていた。興味関心を抱くと、どんなヒトなのか、どんなモノなのかを納得するまで追求をするタイプなので、SAKEROCKの楽曲に始まり、ラジオも毎週夢中で聴き、音楽番組でのトークや話し方もよく見聞きしていた。ただ、やっぱりすごく有名で大人気なテレビの中の人で、単純に“すごいヒト”でしかなかった。
そんな星野源さんを“あれ? この人、すごく近いヒトなんじゃないか?”と親近感を抱けたのが、今回ご紹介をする「そして生活はつづく」。
「奥原さんって、全部シロかクロかの二択ですよね。部屋もすごくキレイそうだし、時間にも細かくていつもきっちりしてるイメージありますね。」
と、学生の頃から今の職場でもいまだによく言われている勝手なイメージ像。これは正直、几帳面な評価を喜ぶべきことなのか、細々していて姑みたいだとけなされているのか、反応しにくくて、いつも「ん~、そうですかね?(笑)」と、うにゃむにゃにと返事をしてしまう。
現に、私生活でも仕事と同じようにタイムテーブルをよく組んで、分単位で動いていることが多いし、部屋でも“ここにこの向きで置いておく”と決めたら、その位置にないと落ち着かない(職場でも全く同じ)。
ただ、どうしようもないくらいズボラになるときもある。友人との食事の約束は時間に間に合ったことがほとんどない。なんなら約束を忘れていた、なんてこともある(これはLINEや履歴を全てすぐに全て削除してしまうことが原因でもある)。お洗濯ものは信じられないくらいためて、「よし、今日はお洗濯をするぞ!」と意気込む日にかぎって雨が降り…また、しばらく放置してひとり暮らしなのに大家族で生活をしてるんじゃないかと疑うほどの量がたまっている。床のお掃除も気が向いたときにしかしないから抜け毛の絨毯ができている。読んだ本はそのまま放置をしてどんどん積み重ねている。飲みかけのペットボトルが5本くらいあったりもするし、携帯料金もギリギリまで支払いに行かなかったり、後回しにすることもある(たまに支払い用紙を紛失し、お店に出向くことも面倒くさくて数日間止まることもたまにある)。この前は自分で作った料理を作ったということに満足してしまい、食べずにそのまま放置をしてたら白いホサホサしたモノが生えていた…。
こんな生活をしている人間が星野源さんに親近感を抱くはずなんてない、と思うんだけど…
手に取って読んで頂きたいので、深堀はしないのですが…この“料金支払いはつづく”がはじまりの物語。手に取ってすぐに読み始める物語が“料金支払い”ですよ? 大人になって、ひとり暮らしをしたことのある人はきっと経験したことがあるはず。そこにはじまりの扉を持ってくるなんて…共感からスタートしてしまうし、意外とこんな生活感もある人なんだな、と勝手に身近に感じてしまう。“星野源”という敷居がわたしの中で一気に低くなった話でもある。
いまだに読みながら「あ~、それわかるな。」と思わず独り言がもれたり、ふと笑ってしまったり。きっと誰もが経験をしたことがあるであろう日常生活が、星野源さんの目線で、自分のダメなところやつまらない生活もちょっと笑えてしまうような発想、思考で綴られていて、芸能人なんだけど、芸能人ではない。…ん~、同じ人間だ! 同じ人類なんだ! と、思える!(笑) 文字だと何度も読み返しができるし、他人の脳みその中身を覗き見できているような感覚になって何回も楽しめるのがいいですよね。面白いんですよ。文章。もちろん、文章だけではなく、ラジオもすごく面白くて。気が付いたら好きになっていて、毎週火曜日は欠かさずに聴いている。
一気に読んでしまった。読めてしまった作品。
なんだか“何もないこの生活も悪くはない”と思えてしまう。“何気ない日常生活”の何気ないところをいかに自分の人生として置き換え、どうしたら面白くできるのか、を教えてくれる。そんな感じ。
今回、ご紹介をした二冊。益田ミリさんの「しあわせしりとり」はちいさなしあわせの見つけ方としての気づきとしてご紹介。星野源さんの「そして、生活はつづく」は何気ない日常生活も決して悪くはないなと今の自分も環境も楽しめる作品としてご紹介。
毎日をなんとなくだらだらと過ごしがちだけど(最近は梅雨にも入ったし、更にだよね)、意識をして毎日に目を向けてみると思わぬ発見に出会えるんじゃないのかな? って。だって、どうせ同じ時間を過ごすならわくわくして過ごしたいじゃない!(笑)
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?