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ホントシオリ vol.11

2019.12.19 LOFTproject RooftopWEB 掲載

テレビを眺めていると当たり前に“芸能人”として活躍をしている人たちが映る。同じ人間にも関わらず、その世界では一般のわたしが普通にしていること…例えば、誰かを好きになったとかデートをしただとか、親しい友人とごはんに行ったとか、そんなわたしが“当たり前”としている日常生活の一部(会話のネタに少しなるくらいの程度)がスクープとされ、注目を集めすぐに週刊誌へ掲載、ネットではあることないこと、思ってもいないことを好き勝手に次々と書かれてしまう、そんな世界のように感じている。正直、“同じ人間なんだから、いいじゃないか”くらいに思ってしまうんだけど、ね。

とてもキラキラした美しい世界に映っているけれど、彼ら彼女らは自宅から一歩でも出たら“テレビに映る自分、表に出る自分”として生活をする。たまに、テレビを眺めていると勝手に悲しく、切なくなるときがある。勝手に。

きっと一度はあると思う。
どこが根源なのかもわからない噂を勝手に真に受け、勝手な先入観を抱き、偏った見方をしてしまったり、ね。実際には、直接その相手とは話したこともないのに。先入観だけで判断をしてしまうこと。


加藤成亮と加藤シゲアキ
加藤シゲアキ「ピンクとグレー」角川文庫 / ¥560+tax

“親友”である河田大貴と鈴木真吾。バイト替わりに高校生の頃に始めた雑誌の読者モデルをきっかけに芸能活動を始める。大学へ進学をし同居生活を始めすべて順調に映るが…芸能活動では真吾が駆け上がっていく一方、エキストラから抜け出せない大貴だけが取り残されていく。

劣等感を味わったことのある人には突き刺さる内容だと思う。例えば、学生生活の中でもすごく親しい人が好成績を残したときに味わう、あの感じ。自分だけがどんどん取り残されてしまう、そんな思いを感じたことない?普段、仲が良いからこそ余計に。自分にはない相手の才能に嫉妬してしまい、そんな思いを抱える自分が情けなく思ってしまうこと。
客観的に観ていると“仲良さそう”と思われていても、本人たちは違和感やお互いに劣等感を感じていることもある。そういう経験をしたことがある方は、共感してしまう作品かもしれない。

映画化が決まったとき、プロモーションでは“開始62分後でのどんでん返し!”と大きく打ち出していたこともとても印象的で、実際に映画館へ作品を観に行った。自分の中で、思い描いていた展開とは異なり、“どこから?”というシナリオマジックに魅了された。映画を観たことない方はぜひ、映画を観て頂きたい。

加藤成亮としての人生があったからこそ書ける内容だったのではないか、と思う。挫折をし、今の活動に至るまでの苦悩。きっと、自分自身を少なからず大貴と重ねていたのではないかな、と。芸能界で生きている彼だからこそ書ける苦悩。作中に「僕を作っているのは僕だけじゃない」の意味をしっかりと感じられる。

人生で挫折って一度は味わったりすると思う。その時どうあなたは生きていくのか。向き合っていくのか。どんな人間になりたいのか。これを読んだあなたにも自分の人生をどう向き合うのかをこの機会に考えて欲しい。
決して、“ジャニーズ所属タレントのひとりが書いた小説”として、読んでは欲しくはない。


―備考―
2003年9月「バレーボールワールドカップ」のイメージキャラクターとして前大会(1999年)の嵐からバトンを受け継ぎ、NEWSが就任。白い衣装を身に纏い“To north!To east!”から始まるデビューシングル『NEWSニッポン』で華やかにデビューをした。個人活動も行っていた山下智久を中心に9人での結成。(当時は草野くんがNEWSの中では好きだった!そして、現在ONE OK ROCKとして活動をするtakaも所属)“ジャニーズ事務所所属”というだけでやはりキラキラして映り、当時中学生だったけど「テレビに出て、人気があって、楽しそうだな。」と漠然と思っていたんだけれど…NEWSは本当に、今に至るまでメンバーの脱退、活動休止が相次ぎ波乱万丈なグループ活動を余儀なくされる。
当時、メンバー脱退が相次ぐ最中、周りからの反応が「いちごのないショートケーキ」「具のないおでん」と言われていたことを、加藤が悔しかったと語っていることもあった。様々な経験、いろんな思いを抱えて現在の小山慶一郎、加藤成亮、増田貴久、手越祐也の4人となり、2011年に加藤は小説家としての活動を決意。翌年2012年に今回紹介をする「ピンクとグレー」で小説家・加藤シゲアキとしてデビューをする。

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