不良に絡まれたイライラと向き合う。
不良に絡まれ、逃げる。
「はぁはぁはぁはぁはぁっっ、はぁっはぁはぁ」
デパートへ入り、息を整えながら、個室トイレへと隠れる。
「うぁっ、はぁ、あぁっはぁ……ふっはぁっ」
情けない。気持ちが沈む。
けれど、震えて、悔しい。
どうするのか?
いや、どうもしない。けど、どうにかしないと辛い。
ここから出ると、まだいるのだろうか?
いや、いないだろ。
いたらどうする?
今ならまだ間に合うかもしれない?
何が? この情けなさを、逆転できるなにかが。
逆襲? いや、そういうことじゃないと、理屈では分かっている。
けど、ふざけるな、ふざけるなと、怒りが止まらない。
準備が必要?
バットを買って、やり返しに。
いや、そんなことしたって。捕まるぞ。でも。
イライライライラ。
恐怖。震え。怒り。辛さ。
勇気を出して、トイレを出る。
意識を周りに集中させるが、不良はいない。
けど、舐められないように、近づくと何しでかすか分からないような奴なんだぞと、目つきを鋭く。でも、拳が震えている。
一応、スポーツ用品売り場で、バットを買う。
ちょっと金属は怖いので、木製のを買う。
「……」
別に復讐するわけじゃない。もしものために。
デパートを出て歩く。
けど、不良は現れない。気持ちはビクビク。目つき鋭く。
そのうちいつもの帰り道。気持ちも落ち着いてくる。
夕暮れの風。
と、公園で少年が一人壁にボールを投げている。
「……」
近くへ行き、手にしたバットを握り構える。
そして、素振りをした。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、ふっ、ふんっ、ふんっふんっ!」
無心で振っていると、気持ち良くなっていく。
ふんっ、ふんっ、ふんっ、ふんっ、ふんっ、ふんっ、ふんっ
ボールを投げていた子供が、最初は無視していたが、気になりだしこっちを見た。
俺はバットを構える。
「……」
投げろと少年へ合図を送る。
少年は、警戒するように、無表情のままだったが、
「……」
振りかぶり、投げる。
「うりゃぁぁ」
ブンっ! と空振り。
「……」
「……」
ボールを拾い、少年へ近づき、ボールと、そしてバットを渡す。
「これで未練はない」
と、少年に告げる。こういうセリフを言う自分を楽しむ。
「……」
少年は、何こいつ、みたいな顔で見ている。けど、バットは欲しかったみたいだ。
とりあえず、なんだか、負けっぱなしだけれど、良い感じな気分になり、気持ちよく帰宅。
風呂にゆっくりつかる。
「……まあ、いいのか」
と、納得する。
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