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誰にも興味を持たれないという立ち位置。


俳優の阿藤快が生前、バラエティーでお色気ドッキリを仕掛けられたのだけれど、カフェかどっかで、目の前に来た露出の多い女性が、足を組み替えたりするとかの奴で、何回チラチラ見るかって感じのもの。
それまでのタレントがチラチラ見て、陰でケラケラ笑われ「ああー、恥ずかしい」なんて言ってるっていう後に、登場の阿藤快。
「……一切見ませんねぇ」

そこに人がいることすら気づいていないんじゃないかの勢い。
で、ネタバレの時、
「阿藤さん、全然、見向きもしなかったんですけど?」
「え? だって俺になんか若い女性が興味あるわけないもん」
の解答。

阿藤快のその発言を時々思い出す。

俺になんか興味あるわけないもの。
俺になんか興味あるわけないもの。

阿藤快がお色気に興味あるとかの話ではなく、若い女性が、自分に興味があるわけがないという理屈。

その理屈を、ふと思い出す。
電車移動や、本屋、コンビニ、犬の散歩中なんかにも思い出す。

既に何かしらの選択肢を排除して、ある程度、スッキリした思考で、目の前の時間を重ねていく。

煩悩を超越した、悟り。
にすら思えるときがある。

けれど、ふと「悲しみ」も過る。
自分に興味を持たられるわけがないに行きつくまでの過程を想像してしまう。老い、誤解、誹謗、諦め、挑戦からの挫折、傷つき、いやもしかしたら、大事にしている思い出や、過ぎ去った時間をしっかりと、自分の中で消化して、自分の立ち位置というものをわきまえている状態なのかもしれない。

で、思う。
僕はどうなのだろうか?
なにか期待ばかりして、自分自身を見誤ってはいないだろうか?

俺になんか興味あるわけないもの。

その言葉を、真正面から受け止めて、かつ、自分自身を前進させていく気力を保っていけるのだろうか?

阿藤快とお色気ドッキリ。
「……ふむ」

今日もまた日が暮れる。




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奥田庵 okuda-an
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