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分かり合えないを眺める。


テレビで専門家が喋ってる。
が、頭に入って来ない。

「……」

専門家も、結構なおじさんとかおばさん。
何やら一生懸命話している。

結構なおじさんだし、結構なおばさん、頭も良さげだし、色々と実績とか、肩書とかがテロップで出ているのだけれど、そんな人たちも一生懸命喋っている。

「……」

おじさんが一生懸命喋っている。
と、言うのは伝わる。
おばさんも、たまに声を張ったり、手を振り上げたりして、何やら熱く喋っている。

「……」

何について喋っているのかは、まったく興味はないのだけれど、一生懸命、おじさんとおばさんが、相手の喋りを奪い合うように話している姿を眺め、

喋りたいんだなぁ。
と、言うことは分かる。

ふと、耳を澄ませて、数十秒だけ言葉に集中してみる。
「……」

が、大して刺さるようなことは言っている気はしない。
ただ、喋っていることに対し、伝えようとしている気持ちみたいなものは、なんとなくわかる。

可愛らしいなぁ。
なんかいいなぁ。と思う。
おじさんもおばさんも喋りたいし、伝えたいんだな。と。

おじさんは白髪頭になって、シミもポツポツあって、メガネをしていて、でもきっちりとしたスーツを着て、痩せ型だけど頬はたるんで、おばさんも、パーマかけて、化粧は目元に力を入れている感じで、ネックレスが派手だけど、少し明るめの洋服で、あまり老け込んで見えないような感じで、

褒めてもらいたい。
見てもらいたい。感心されたい。伝えたい。
こんなこと知ってる。こう考えている。私はここにいる。
ね、これ気づかないと!

喋っている言葉が頭に入って来ない分、なんとなく表情から「想い」みたいなものを汲み取り、眺めてしまう。

可愛い。
生きてるなぁ。生きてるって、可愛らしい。

「……」

何言ってるかは分からないけど、元気をだそう。と、思った。




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奥田庵 okuda-an
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