見出し画像

空き地があるだけ。

数カ月前までは畑だった。
今では雑草が生い茂り、たぶんそこが畑だったなんて誰も信じてくれないだろう。
高齢の女性が作業していたように思う。
何度か見かけた。

もう、野菜を育てるのを止めてしまったのだろうか?
突然、色々なことが嫌になり、「今日はまあ、いいかな」なんて言っているうちに、なんだかどうでも良くなってしまった。そういうことだろうか?

そういうことは、僕にも思い当たる。
色々なことが、放置され、雑草だらけになり、もう、忘れてしまおうと思う。
そういうこと。

もしかしたら、死んでしまったのかもしれない。

僕は雑草だらけの畑だった場所を眺め、少しだけ寂しい気持ちになる。
きっと、雑草だらけになっている本当の理由を求めているのではなくて、ただ、そこに、僕自身の、放置されたものへの罪悪感のようなものに居心地の悪さを見たのだろう。

時間が流れすぎていて、それがいったい何なのかすら思い出せない。

とても大切なことのような気もするし、今にして思えば、どうでもいいことのようにすら思える。
僕は、その「どうでもいいこと」に、多くの時間を費やし、多くの何かを失った。
そんな気がする。
気がするだけで、実際はわからない。

まあ、過ぎたことさ。
畑だった場所はただの空き地になり、雑草が生い茂る。
それもまたいずれ、過去のことになる。

僕もまた空き地のことを忘れていく。

いいなと思ったら応援しよう!

奥田庵 okuda-an
よろしければサポートお願いします。大切に使わせていただきます。