「成人映画とやらを一度観てみたい」と彼女に言われた
場末の名画座でのバイトは時給350円。昭和60年当時、最低賃金を下回っていた。
それでもやり続けたのは、映画見放題だったからだ。バイト先はもちろんだが、市内のすべての映画館で上映されている映画も含んだ。興行パス券のおかげだ。
それは映画館同士の交流を深めるという名目で各映画館に2枚配布され、それを持って他館の受付で「お疲れさまです」と言いながら提示すれば、「お疲れさまです」と言われながら館内へ素通りできるという代物だった。私なんぞはこの魔法のパスを使って、名作映画と成人映画