奥歯

1980年代の青春と恋愛

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三冠王落合博満をデートに利用した話

学生時代、平和台球場の近くの西公園に住んでいた。ナイターの時は、アパートのカーテンのない窓が明々と輝き、応援や鳴り物が聞こえてきた。 野球観戦のきっかけは、ロッテ時代の落合博満だ。その頃、落合の3度目の三冠王が話題になっていて、達成すれば王とバースを抜いて史上初の大快挙ということだった。 そこで思いついたのが、先日映画館でナンパしたイラストレーター女子だ。電話をかけて野球観戦のことは伏せたまま、彼女の仕事帰りに会うことで話はついた。その夜は「ロッテオリオンズvs南海ホーク

    • 「成人映画とやらを一度観てみたい」と彼女に言われた

      場末の名画座でのバイトは時給350円。昭和60年当時、最低賃金を下回っていた。 それでもやり続けたのは、映画見放題だったからだ。バイト先はもちろんだが、市内のすべての映画館で上映されている映画も含んだ。興行パス券のおかげだ。 それは映画館同士の交流を深めるという名目で各映画館に2枚配布され、それを持って他館の受付で「お疲れさまです」と言いながら提示すれば、「お疲れさまです」と言われながら館内へ素通りできるという代物だった。私なんぞはこの魔法のパスを使って、名作映画と成人映画

      • 瓶底メガネをかけた天然パーマの先輩

        映研にM先輩という人がいた。 実家は大手の不動産屋で金持ち、瓶底メガネをかけた天然パーマのふてぶてしいツラがまえ、成績は良いらしいが性格に難があった。私たち1年生をアゴで使い、ヘマをするとゲラゲラと笑い物にするのを楽しみしていた。秋の文化祭が近くなった頃、そのM先輩が「次の土曜日に仕込みに行くから、手伝え」と勝手に三人を指名した。私もその一人だった。 さて土曜日、私たちは言われた通りに手提げ袋を用意して集まった。先輩の仕込みとは映画館からポスターをタダでもらい受けることで、

        • 最初の女優は同級生のメガネ美人だった

          高校には映画研究部(映研)というものがあった。 3年生の先輩たちは「青春の影」という8ミリ映画を撮った。高校生活に漠然と悩む男子を描いているのだが、それがどうしたという内容だった。でも見慣れた鳥栖駅のプラットフォームから旅立つ主人公にチューリップの名曲「青春の影」が流れると、ちょっとじんときた。 2年生の先輩は三人だけで影が薄かった。大石という男子先輩は大人しくて成績優秀だったが、バイク免許の無断取得で停学をくらったあたりから、みるみるうちにダメになっていった。その変化に