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それってほとんどアイラブユーじゃん。(散文)
ある火曜日。2023.7.25
クリニック(職場)の休憩室のエアコンは直した3日目にまた壊れた。
昼。灼熱の休憩室か、ついさっきまでコロナ陽性者を診ていたクリニックの片隅か、悩んでクリニックの片隅でサンドウィッチを齧る。
最高気温37度だって。
発熱外来の予約電話が鳴り止まない。
1日1人は必ず「(電話つながん無くて)来ちゃった」っていう発熱患者がいて、「遠距離恋愛中の彼氏じゃ無いんだから」って思う。ご本人に「遠距離恋愛中の彼氏じゃ無いんだから」っていっても許されるならもう少し頑張れるんだけどな、ふふふっ。
せめて発熱外来の時間に来てくれよと、今日も健診で来ていた90歳のおばあちゃんを背中に隠す。
だいたい私は付き合う前に「サプライズとか無理だから」って言って付き合うタイプなんだけどな。
同じ歳のスタッフに髪の毛の写真を撮らせてって頼まれた。
「写真撮っていいですか?美容師さんにこうして欲しいって見せたくて。」
それってほとんどアイラブユーじゃん。と思う。
夏は生きてるだけで疲れるなぁと思いながらの帰り道、途中にあるアパートが『コーポトキエ』だということに気がついた。トキエの人生に思いを馳せる。
私のはじめてのひとり暮らしのマンションは『森の仲間』というやや珍妙な名前で、大家の森さんは会うたびにちくりちくりとと嫌味を言ってくる様な人だった。
仲間意識なんてこれっぽっちも無いじゃんと19の私は悲しんだものだ。
トキエはまだご存命だろうか。
今日は名前なんかわからない形の月が出ていた。綺麗。
夜になりきれていない空、深い青にポツンと出ている月を見て、好きな人と行った花火大会を思い出した。
まだ夜になっていない花火開始前、人混みの山下公園、すっ転んだ私と、他人のふりをする彼。
あの19の私も悲しかったな。
愛されていなかったんだな。愛されていないって知りながら、20の花火も21の花火も彼と行った。
コーポトキエ。
それってほとんどアイラブユーじゃん。
コーポ(私)は作られない。
実は祖父の名前のビルが2つあって、祖父は祖母では無くて自分の名前をビルに付けた。私はたぶん祖父に似ている。
夏って花火みたいに思考が散っていく。
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