『スカイフック』第5話 海に戻りたい
「投下」
機長は、すかさず爆弾を投下するよう命じた。
ディング少尉がまさに、そのレバーに手をかけた瞬間、正面から何かに衝突したようにつんのめるような衝撃が走った。機体が大きく揺れた。
操縦室内には異常は確認できない。
「ハリス、エンジンは大丈夫か?油圧は?」
機関士のハリス少尉に確認させる。
「油圧の急速低下。早急に損傷箇所をシャットダウンしないとコントロール不能になります」
そのやり取りの最中にも、ドラム缶を何本も転がすような音がして、爆弾が投下用のレーン通っているのが分かる。
火災が発生して爆弾に引火すると、大変なことになる。機体は、徐々に左右に揺れ始めた。
「機長、垂直水平共に尾翼がだめです。方向舵、昇降舵が動きません」
「ハリス、後方の油圧をシャットダウン」
「スイス、主翼のフラップだけを使って右旋回、離脱して帰還する」
「機長、爆弾投下中です」
通常、爆弾の降下する場合は水平飛行の時に限られる。旋回したりして、機体が傾いている場合は、正しい目標に投下できないどころか、機体の中でジャミングを起こしてしまって機内で爆発を起こす恐れもある。
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