『スカイフック』第4話 天使の落としもの
白波は、高高度であっても識別できる。陸地は、白波によって縁取られて無言の存在感を示す。
編隊は、その大きなクリームで縁取りをされた塊を右手に見ながら飛行する。
それは様々に形を変えて行く。その塊は、まるで暗闇に横たわるとてつもなく巨大な怪物のように見える。
編隊群は、その腹やら足やらを見ながら飛び続けた。もう終わったのか。暫く見えなくなる。見えなくなりながらも、右手に気配を感じながら飛ぶ。
やがて目の前にその怪物の尻尾のようなものを認めると、編隊群は、進行方向を北に旋回した。
「爆撃用意。総員配置につけ。今夜のロックンロールショーの始まりだ。これより、神に祈ることは禁止する。その前に全力を尽くすんだ」
「了解」
「了解」・・・
搭乗員は、それぞれ答えた。
だだ、その全員が今夜の機長のコメントがいつもの砕けた言い回しと違っていたのが気に掛かった。
いつもと違う緊張が走った。
腹の中をゴロゴロするような音を立てて、爆弾が動くのがわかる。
搭乗員の誰もがこの音を聞くと、この悪魔の作った贈り物を一刻も早く空から、放り出したいと願っていた。
たとえそれが、修道院の上であろうが、日曜日の朝の教会の上であろうが、御構い無しにぶちまけたいと思っている。
飲み過ぎで、突然やってくる嘔吐のように、それをこらえることは出来ないのだ。一刻も早く、それを打ち撒き散らしてすっきりとしたいだけなのだ。
「さあ、歓迎会が始まったぞ。今夜はガンマンのお出ましはないから、爆弾と一緒に落ちないようにしっかりつかまっといてくれ」
サーチライトが交差して、的外れの砲弾が祝砲のように見える。
それは、凱旋帰国した我々を歓迎しているかのように見えた。
先頭を飛行している編隊はもう目標に向かって、爆弾を落とし始めた。
機体の底にある扉が開く音が聞こえてくる。
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