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大河内健志
2020年4月13日 14:48
あたりが薄墨を塗り重ねるように暗くなってくる。色の境がくっきりとしてきた。黒はより深みを増し、灰色には微かに金色が混ざるようになってきた。月の光だ。月が出ているのだ。漆黒は悪事を包み隠してくれる。しかし、冷たい月の光はそれを許してくれない。「遅くなってすまん。山崎烝さんからの差し入れだ」齊藤一は、柄と鞘を握った手を離さないで、緊張感を途切れさせないように、大石隊5人の各々の懐におに