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大河内健志
2020年7月29日 22:35
武蔵は思い悩んでいたのだった。小次郎に勝てるという自信がなかった。今まで数々の試合をこなしたが、全て勝つことが出来た。己の思うままに体を動かせば、難なく相手を倒すことが出来た。そこには、剣法も理合いも必要としない。己に宿る野生のままに向かえば、容易に相手を倒すことが出来た。体の奥から沸き起こる炎で相手を包み込んでしまえばそれでよかった。戦う前に勝負は、すでに決まっている
2020年5月17日 23:45
父、無二斎より、小倉藩の権力争いのごたごたを収める意味も含めて、「佐々木小次郎」なる剣術師範と試合をしてくれと懇願された時も、さほど気にも留めていなかった。政治ににかかわる垢じみた剣術家など、いつものように一蹴してやればよいと思っていた。しかし、見てしまった。佐々木小次郎の使う剣を。その存在自体を見てしまった。それは、今までに見たことのない存在。自分の範疇の中に入らない存在