シェア
大河内健志
2023年12月9日 15:46
小次郎は目を閉じ、ひたすら武蔵を待ち続けていた。全ての雑念を遮断し、神経を丹田に集中させた。陽がゆっくりと動く。潮が引き。また満ちてゆく。小次郎は、何時間でも、何日でもその状態でいることが出来る。心を微塵も動かさない。積み重ねた鍛錬のたまものである。物心ついた時から木刀を握っていた。親の顔さえ知らないのに、その木刀だけは今でも鮮明に思い出す。ずっしりと