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【インタビュー⑩】文学の力
10人目のインタビュー相手は秋田出身のH。彼女と話すと本当に元気をもらえる。今回は真面目な話もできて改めて私も気づかされることがあった。いち早く協力の依頼に応えてくれたことにも本当に感謝!
ーどんなときに、平和だと感じる?
思い出を振り返った時かな。今だと高校や中学の友達に会った時、あの頃もなんだかんだ幸せだったなぁと感じる。
ー過ぎてみなければ気づけない幸せはあるよね。時間だけはどれだけ願っても巻き戻ってくれない。話が急にシリアスになるけど、原爆投下についてはどう考える?
もともと小さい時から戦争や原爆、もっと言うと暴力的な方法全般にメリットを見いだせないでいるから、正しくないと思う。終戦の大きな切り札になって、犠牲が減ったのは確かかもしれないけど、人がたくさん亡くなっているかつ今でもその脅威が語り継がれている以上、最善の策では決してないよね。
ーその通り。今までの平和教育で印象に残ったことはある?
『ちいちゃんのかげおくり』がいちばん印象的かな。初めて読んだ戦争に関する本だったと思う。クラスのみんなで実際にかげおくりをやってみたりして、戦争の時も今も変わらないものがあるんだという話を先生から聞いた記憶がある。
ー以前別の人のインタビューにも登場した作品だよね。トラウマを植え付けてしまうという意見もあるけど、同年代の女の子が主人公になっているから子供たちが戦争を身近に感じることのできる内容だと思う。
私は戦争についての絵本や詩、体験記にすごく興味を持っていて。児童文学作品に子どもたちが小さい頃から触れることで、戦争について話すことに躊躇いがなくなると思う。
ー単なる事実として機械的に教えるよりも、人間の感情に本能的に訴えかける文学を平和教育に活用するのはすごく有用だよね。
戦争文学の中での有名どころは、話に上がった『ちいちゃんのかげおくり』や『おこりじぞう』などがある。広島の子どもたちは必ず学習するし全国的にも知られている峠三吉の詩も、ここに再掲しておこう。
(ちなみにカナダ人の教授も知っていて驚いた。)
ちちをかえせ ははをかえせ
としよりをかえせ
こどもをかえせ
わたしをかえせ わたしにつながる
にんげんをかえせ
にんげんの にんげんのよのあるかぎり
くずれぬへいわを
へいわをかえせ
シンプルながらも的確にメッセージを伝えている。
文学が人に与える影響はやっぱり偉大だし、こういう少ない文字数の行間からどれだけのことを感じ取るかということが大切なのだと思う。