【不登校の親 体験記】不登校の息子を育てて⑤
おこのみ会代表の国賀です。
私は愛知県安城市で不登校の小中学生と親の居場所『おこのみ会』を運営しています。
自分自身の不登校児の子育て経験を書いています。
息子の居場所を探す
不登校の息子と娘と、日中3人で過ごす毎日は、私にとってとても辛いものでした。
心に余裕がなく、息子も度々癇癪を起こしたり、私と離れることを嫌がったりと、不安定な様子を見せていました。小学校一年生の息子を家に残して買い物に行くこともできず、息子は用事に付き合うのを嫌がっていたので、簡単な用事を済ますことすら大変でした。
家では、息子はYouTubeやゲームに夢中になる日々。そんな息子を見ていると、心配や不安、いらだちが募り、どこか安心して楽しめる場所があればいいのにと思い、居場所を探し始めました。
しかし、当時は不登校の子どもが平日に過ごせる場所は限られていて、市内では適応指導教室くらいしかありませんでした。適応指導教室に行ってみたものの、勉強時間があったり、年齢の近い子がいなかったため、息子は通い続けることができませんでした。
途方に暮れていた頃、親の会で「不登校親子の居場所」ができると聞き、息子と一緒に参加したのが「おこのみ会」との出会いでした。
おこのみ会での変化
初めは、息子は一人でゲームをして過ごしており、私は「ここでもダメかもしれない」と感じ、落ち込むこともありました。
しかし、回を重ねるごとにサポーターの方々と打ち解け、少しずつ友だちができて、一緒に遊ぶ姿を見られるようになりました。息子は、私と離れて過ごす時間も増え、私も他のお母さんたちと話したり、活動に参加したりすることができるようになりました。
息子は次第に「おこのみ会」を楽しみにするようになり、木曜日だけでなく、他の日にも友だちと遊びたいという気持ちが芽生えました。そして、「おこのみ会」に来ていた子どもたちが適応指導教室にも通っていることを知り、息子も「一緒に行きたい」と言い、再び適応指導教室に通うようになりました。
適応指導教室では、最初は遊びの時間だけの参加でしたが、徐々に「もっと一緒に遊びたい」と言い出し、長い時間滞在するようになりました。それでも、勉強に対しては抵抗感が強く、癇癪を起こしてプリントを破ったり、課題を鉛筆で塗りつぶすこともよくありました。しかし、先生方が辛抱強く寄り添ってくださり、少しずつ勉強にも向き合えるようになっていきました。高学年になる頃には、癇癪もかなり減り、勉強に向かう時間も増えていきました。
息子と私にとっての居場所
息子にとって、居場所が自宅、おこのみ会、適応指導教室と少しずつ増えていく中で、毎日を充実して過ごすようになりました。毎日迎えに行くと、車に乗り込むときに必ず「今日も楽しかった~」と笑顔で言ってくれます。それを聞くたびに、「この道を選んでよかった」と感じるのです。
居場所で出会った方々は、皆さんとても優しく、息子の成長を大らかに見守ってくださいました。息子が少し成長するたびに、その成長に気づき、一緒に喜んでくれる人たちがいることは、私にとっても大きな励みになりました。不登校になったとき、息子の未来がすべて私にかかっているという大きなプレッシャーを感じていましたが、居場所で出会った多くの人たちが、そのプレッシャーを少しずつ分担して持ってくれたように感じます。
居場所の大切さ
息子にとっての居場所が増えることは、安心感と自己肯定感を育む大切な要素でした。
不登校になった時、息子の中にあった自分のことを分かってくれない、自分が嫌だと感じることを強要されるという不信感を、居場所で過ごす中で、自分の気持ちを大切にしてもらえる、嫌なことがあっても助けてもらえるという感覚が育ち、それが息子自身の自信に繋がっていったのです。
子どもが「ここなら安心できる」と思える場所があると、次の一歩を踏み出す勇気が自然と湧いてきます。居場所がただの物理的な空間ではなく、心が解放される場所であることが、子どもにとって何より重要なのです。
また、親である私にとっても「おこのみ会」は大切な居場所でした。息子の問題を一人で抱え込むことなく、他の親御さんやサポーターの方々と気持ちを共有することで、少しずつ心が軽くなり、前向きに子育てに向き合うことができました。
親自身も、誰かに支えられることで、子どもを支えるエネルギーを取り戻すことができるのです。
居場所を探す難しさ
ここに書いた経緯はかなり省略されたものなので、もしかしたらトントン拍子に居場所が見つかり、息子が良い方向に進む始めたという印象を持たれるかもしれません。
しかし実際には小1の時に不登校になり、安定して通える居場所を見つけるまで(通い始めても本当の意味で安心して通えるようになるまで)にはとても長い年月がかかりました。
息子の精神が安定し、毎日を楽しめるようになってきたなと感じたのは小5の頃からです。
ここには書いていないですが、たくさんの場所に見学・体験、実際に通ったところもありましたが、探してきてもそもそも行くと言ってくれなかったり、行くと言ったのに家から出られなかったり、出先の玄関で泣き出して動けなくなったり、私から離れられずに毎回付き添うことになったり、結局続かなかったり…と書き出したらきりがないくらいたくさんの苦しい日々がありました。
その度に私は期待し、がっかりし、イライラして、でもそれを息子に見せないようにと頑張って、でも結局当たってしまう。そんな私にとっても試練の日々でした。
子どもにとって、本当の意味で安心していられる居場所を見つけるまでには長い年月がかかります。
おこのみ会も見学や体験に来てくださる方はいますが、継続して通える子は少ないのが現状です。
息子と過ごした日々の中で感じたのは、子どもが家庭以外の居場所を見つけるためには、その場所がどんな場所か、どんな人がいるか、それはとても重要なことですが、何よりも大事なのはその子自身のタイミングです。
そのタイミングがいつ来るのかは誰にもわかりません。
そんな日が来るとはとても思えない時もあると思います。
しかし、子どもは成長します。
変化します。
自身の考えで一歩踏み出してみたいと思える日が来ます。
そのタイミングでスモールステップで一歩を踏み出せる場所の選択肢がもっと社会に増えてくれると良いなと感じています。
そしておこのみ会もそんな場所でありたいと思っています。
おこのみ会は参加者の参加費・会費、善意の寄付金で運営しています。 学校に行かない選択をしても、子どもたちの居場所や学びの機会が失われない社会を目指しています。 頂いたサポートは活動費として使わせていただきます。