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座員の雨宮が商業演劇の舞台公演を手伝って一か月近くタダ働きした末に小道具代を2万円以上負担させられた話。

はじめに。

はじめまして、尾米タケルと申します。

……というあいさつから入るのが適当なくらい、これまで僕のことを知らなかった多くの方々にこの記事を読んでいただきたいと思っております。

僕は尾米タケル之一座という団体で主宰・作・演出をつとめているフリーランスの劇作家?のような者です。

現在、雨宮シオリ犬と坂口翔平という気のいい二人と共に日々、楽しく真剣に、一座の活動をしております。

今回は、僕が個人的に受けた演出の仕事で、座員たち、とくに手伝いで現場に入ってくれた雨宮に、とんでもない負担と精神的・経済的打撃を与えてしまいました。

以下が事の顛末です。

要約

先日演出として参加したJーROCK主催の舞台(6月15~19日本番)会場は六行会ホールという座席数248席もある劇場。お客様からは7,700円~9,500円ものチケット代をいただくという立派なものでした。
しかし、現場には必要な人員が足りておらず、稽古開始早々本番開幕の危機を感じた僕は、(のちに詳しく話しますが、これらは明らかに人災です)
JーROCKの社員でプロデューサーであるK氏に直訴し、座員の雨宮小道具の手伝いとして現場に入ってもらい、なんとか稽古・本番を乗り切りました。

(ちなみにこのプロデューサーのK氏小道具の担当です。演劇の現場に明るい方ならこの時点で「ん?」となるのではないでしょうか?)

本番を終え二か月。待てど暮らせど先方から精算の連絡はなく、こちらから催促してようやく動き出したものの、

雨宮が立て替えた小道具代¥50,326を領収書とともに請求したところ、K氏から「こちらで聞いていない物が入っているので¥22,059分のみ、お支払いします」という連絡。

この「こちらで聞いていない物が入っている」という部分に関しては、色々あるので後に詳しく。

それはそれとして、

何で舞台で使った小道具の費用を雨宮が払わなあかんわけ?


このことについて電話で、メールでさんざん話し合うも、最終的にJーROCK側の答えは、

請求書は下記でいただけますと幸いです。
弊社、Rにも伝えましたがご納得頂けない場合は今後は第三者を通して書面でのやり取りとさせて頂けますと幸いです。
〈中略〉
② 宛名:株式会社ジェイロック
案件名:舞台「■■■■■■」
2022/6/15〜19  会場:六行会ホール
内容:小道具制作費
¥30,054+税 合計¥33,059

②には雨宮さんの人件費も含ませていただいております。

「弊社、R」というのは話し合いの途中で出てきたK氏の上司で、
JーROCKの部長です。

雨宮は本来無関係な舞台本番開幕の危機を救済するためにお手伝いとして現場に入り、JーROCKという会社が主催する舞台の本番のために一か月近く無償で働き続け、(その間休みは一日半)その結果舞台の小道具費も¥20,000近くお手伝いするという、たいへんトホホな状態になっております。

トホホどころじゃないですよ。ガビーンです。

後に、JーROCK側とのメールのやりとりを、補足を交えながら全文公開します。

(本当はどんな現場だったか、事細かに書いていきたいのですが、
なにぶんいま、わたくし12月公演の新作の台本を書かなければならない身でして。。)

ここから、もう少し細かい経緯を説明させてください。

その前に、

舞台の内容

を簡単に。

幼くして父と母を亡くし、施設育ちという自身の出自にとらわれ、人生に前向きになれない主人公の青年が、メモリートリップという機械を使って1990年代にトリップ。潤という高校生として目覚める。そこで主人公は同じく施設育ちのカンちゃんという少年と出会い、クラスの端っこ同盟の仲間たちと科学部を結成し、学校祭で花火を打ち上げ、歌って踊る科学ショーを行い、カンちゃんが意中の女子、モトコと結ばれるきっかけをつくろうと奮闘する。ところが学校祭前日、ちょっとした事件が起こり、花火も科学ショーの道具も台無しに。主人公はその事件をきっかけにカンちゃん・モトコが自身の父と母であることを知るが、そこでメモリートリップは終了。父親が自分と同じような境遇にありながら懸命に生きていた事実を知り、自身も少し前向きに生きてみようと思う主人公。最後に皆で幻の科学ショーをしてエンディング。

かなりざっくりですが。このような内容。
この科学ショーというのが、今回の件に大きく関係し、JーROCK側とのメールのやりとりにもかなり出てくるので記載しましたが、

作者のSさんへ
想いを込めて書かれた大切な作品をこのような場に持ち込んで本当に申し訳ありません。掲載の許可をいただけたこと、この場を借りて、改めてお礼申し上げます。

雨宮を現場に呼んだ経緯

雨宮は僕がK氏に「無償でいいからうちの座員を入れさせてくれ」と直訴して現場に来てもらいました。

(なんやお前が無償でええって言うたんか、と思われた方。まだ続きがあります。最後までご一読を)

それには以下のような理由があります。

作品のクライマックスである科学ショーをやるにあたって、稽古開始と共に直ちに実験・検証を進めようという話をしていたにも関わらず、道具を発注しても、まったくそろわない。一向に実験が進まない。

このひと件にめちゃめちゃ問題が濃縮されているので整理します。

まず、科学ショーをやるにあたって僕は不安でしょうがありませんでした。

科学ショーをやること自体にではありません。

科学ショーをやるための体制がまったくとられていなかったからです。

初期の打ち合わせ時、専門家やアドバイザーのあてはあるのかと聞くと、

「自分たちでがんばりましょう」

との回答。

これ、最終的になんとかしなければならないのはどう考えても演出家です。

何の不安も感じていなそうなK氏に、「これはそうとう大変な作業になると思いますよ」「かなりの時間と試行錯誤が必要になると思います」ということを伝えました。

稽古場が使えるようになったら、直ちにショーの実験・検証をしなければということになっていました。(できれば稽古の前からはじめたかった)

ところが、稽古が始まっても実験は一向に進みません。小道具担当のK氏に発注してもなかなか道具が届かない。数日経って道具はいつ届くのかと確認すると「それってこれ(僕が『これを購入してください』と送ったamazonのページ)でいいんですよね?」「これは何に使うんでしたっけ?」というようなことが頻発。

そもそも、初期の打ち合わせでは小道具の製作は演出部に発注ということになっていました。ところが稽古が近づいてきた段階で演出部は本番前の数日しか稽古場に来ないということが発覚。(後に少し現場入りを早めてもらいました)

どう作ればいいかを試行錯誤しなければならないものを、稽古場に居ない人たちにどう発注すんの?

仮に発注したとして、それをもっとこうして欲しいとか、こうしようとか、いちいち道具送ってもらって、送り返してってすんの?

毎日届けて回収しに来てくれんの?そんなわけないよね?間に合わないよ本番?

というようなことをやんわりとK氏に伝えました。稽古場で作っていかないと無理ですよ、と。

K氏からの回答は

「わたしが作ります」

「いつも作ってるので大丈夫です」

かくして小道具担当はK氏になりました。

ところが稽古が始まってみると、「みんなでがんばりましょう」と言っていた科学ショーの実験と検証、道具の製作は、ほぼ僕がひとりでやらなければなりませんでした。K氏は稽古後に僕が道具作りを始めてもどこ吹く風でパソコンとにらめっこ。「これはもうあかん」と僕の中では雨宮の顔が日々色濃く浮かんできたのでした。

(K氏の名誉のために言っておきますが、K氏もまったく手伝ってくれなかったわけではありません。風船をいくつか膨らませてくれましたし、日々、膨大な仕事に追われつつ、フライングバタフライ(紙と針金とゴムで作った蝶々)もひとつ、作ってくれました。飛びませんでしたが。「針金・紙・ゴムの種類をいろいろ試さないとダメですね(実際はもっと具体的にいろいろ)」とお伝えしましたが、二匹目の蝶が僕の前に現れることはありませんでした)

そして、いよいよ雨宮を呼ぶ決定打になる出来事が、稽古開始から一週間目に起こりました。

その日、稽古場に音響さん(初対面)が来るとのことで、音響のイメージやらきっかけやらをまとめて稽古場に。稽古の合間にあいさつして
「どんな感じで進めましょうか?」と聞くと

「ああ、素材(音)ときっかけデータでいただければ叩きますんで」
とのこと。

……え。

音素材こっちで用意すんの!?

聞くと音響さん、イベントやコンサートのオペレーターで演劇ははじめてだそうで。どんな発注をしたのか知りませんが、音響さん気の毒でした。
白バイ隊員が、殺人事件の鑑識にかり出されたみたいなもんです。
いや、どっちも警察官かもしらんけど。って話です。
はじめてでもいいですが、その分のスケジュールをまったく確保していない。

演出助手のYくんとともにK氏にどうするつもりなのか聞くと、

「わたしが素材集めます」

出たーーーーーーー!!!

必殺のやつーーー!!

今でさえ現場全然回ってなくて本番間に合えへん言うてんのに、またそれーーーーーーー!!

因みにK氏は衣装の担当でもあり、映像のテロップも担当しています。

衣装は衣装でめちゃめちゃ悶着ありました。
まず、「これでいこうと思います」と演出になんの相談もなく衣装をすべてそろえる。みんな同じ学校のクラスで目立たない地味な学生という設定なのに、制服はみんなバラバラ。色も形も違うベスト数名、色も形も違うカーディガン数名、ブレザー着てたり、違うブレザー着てたり……。ネクタイの色も違う、ズボンもグレーがいたり、黒がいたり……。

何故こんなバラバラなのか、と問うと「ビジュアル用なので」との回答。
それにしても、とは思ったけれど、「まぁ、俺は本編に集中しよう」と無理くり納得していたら、稽古終盤になって「もう、ビジュアルで出してしまっているので」とそのままの衣装で乗り切ろうとしたり……。

映像のテロップも、というか映像素材ほぼすべて、僕が見たのは小屋入り当日です。。映像オペレーターもK氏に稽古場での打ち合わせを要求しましたが、結局劇場で「初めまして」。

音も本番数日前。

稽古終盤、通し稽古で雨宮が音を出すことになっていたのですが、通し開始直前まで音源データをもらえず、しかも送られてきたデータすべてにファイル名が無く、時間のない中雨宮はすべての音をいちいち再生・確認して、パソコンに取り込んでおりました。(膨大な小道具の準備もしつつ。。)

……話がそれました。戻します。
とにもかくにももうあかん、絶対無理。ということでK氏に「とにかくKさんの仕事量が多すぎる。Kさんが悪いとかじゃなくてその仕事量をこなすのは無理。完全にパンクしてるしこのままだと本当に本番間に合いません。無償でいいので(こう言わないと絶対断られてた)うちの座員を小道具の手伝いで入れさせてほしい」と直訴。

その日の稽古終わり、雨宮に電話をかけたのでした。

(音響の件がなくてもどのみち呼ぶことになっていたと思いますが)

実は雨宮、稽古が始まる前から、「タダででも手伝いますよ」と言ってくれていました。僕が「人が足りなすぎる。絶対やばい」と言っていたからです。だけど「会社がやってる舞台やし、無償労働はよくない」「『これでも(必要な人員と予算を削って)なんとかなる』と思わせたらあかん」ときっぱり申し出を断っておりました。

ところが稽古開始から一週間で僕は「ごめん!手伝って!タダや!」ときっぱりお願いするはめになったのです。

※さらに「無償で演出助手やりますよ」と言ってくれた方もいらっしゃいました。尾米、実に人に恵まれております。
(最初は演出助手もつけないという話でした。「最悪わたしがやります」とK氏。。)

かくして雨宮は、現場にお手伝いとして入ることになったのでした。

雨宮が現場に入った初日

電話をした翌々日、雨宮がさっそく現場に入りました。(初日まで三週間!)
この日に小道具や衣装についての打ち合わせをしました。
その前に僕と演出助手のYくんで、いま一度、

現状がどれほどまずい状況か。
なぜ、そのような状況になっているか。

というようなことをK氏に話しました。

そして、遅れに遅れている状況を取り戻すために、小道具や衣装をある程度雨宮に任せたい。

そのために、それぞれ予算を教えてほしい。
それで足りなそうな場合はまた相談させてほしい。
ということを言いました。(その流れで雨宮に仮払いをあげたかった)

しかし、K氏の答えは、

「それはできません」

「購入したい小道具や備品はすべてわたしを通してください。その中から購入していただいて大丈夫なものはお伝えします」

いや、さっきの話聞いてました!?
ここでまたあなた通したら、また返事に何日もかかって、なんも状況変われへんでしょ!?
なんのために雨宮に来てもらってんの!??
雨宮の手間も考えてる??
ホンマに今どういう状況かわかってる!!?

僕もYくんも到底納得できません。

しかし、K氏は若干目に涙を浮かべながら「できません」。

僕は、途方に暮れるというか、あっけにとられるというか、ある種の恐怖というか。よくわからない、初めて覚える感覚にとらわれました。同時に、K氏の「できません」に「私にはどうすることも」というニュアンスも感じていました。

もしかして、K氏も小道具の購入、その他あらゆる判断に関して、いちいち上の人間に確認を取らなければならないのではないか?

というようなことも考えていました。(真相はわかりませんが、このような感触を覚えたのはこの時だけではありません)

すると雨宮が

「じゃあ、このリストのなかで、今そろっているものと、Kさんの方で現在手配しているものを教えてもらっていいですか?」

とK氏の意向に沿う形で話を進め始めました。

雨宮は打ち合わせの後、僕とYくんにこの発言のことを謝ってきました。

「すみません、Kさんがかわいそうになってしまって」

これには、小道具の打ち合わせの前の話の段階でYくんが若干口調が強くなっていたということもあったみたいです。

(Yくんがそうなるのは当然です。そもそもが他のセクションとかけもちの演出助手で大変なのに、理不尽な予算と人員削減で、本来の仕事じゃない仕事をさんざんやらされていたうえ、本当に現場が危機的状況だったのです。Yくんはここでなんとかしなければ、と話をしてくれたのでした。)

さらにYくんと別れた後、「せっかくYさんが色々お話してくれたのに、申し訳ないことをした」とも言っていました。

とにもかくにもこの時の雨宮の発言と、それを止めなかった僕の判断が、後に「聞いていない物はお支払いできません」と大きな仇となって返ってくることになりました。

ただ、確かにこの時仕事の進め方としてこのような話はありましたが、
「聞いていない」というのなら、僕も雨宮も「手続きを踏まずに購入した小道具の費用は払えない」なんて言葉は精算の時まで一度も聞いていません。

それに、仕事の進め方は、僕と雨宮が一方的に厳守すべきものでしょうか?双方が守るべきものではないでしょうか?

この後、雨宮がこの時点で購入が必要な小道具・材料のリストをあらためて送りましたが、「購入いただいて大丈夫です」と返事がきたのは2点のみ。

その他に関しては返事こず。

リストのなかで返事がこない物に関して、LINEであらためて確認したり、直接話したり。それでも返事がこない。保留にされる。

一刻を争う状況のなかで、何か買おうとするたびに、三度も四度も確認しなければならないということが頻発します。(それでも回答が得られない)

伝えている物も「それって何でしたっけ?」ということも相変わらず。

(こう書くとK氏は仕事をろくにしていないようですが、そんなことはありません。めちゃくちゃ仕事をしています。こちらが心配になるくらいに。しかし限度をこえる仕事を担当しているために、このような状態になっているのです。たぶん。)

取り決め通りに仕事を進行できなかったのは、僕たちでしょうか?

さらに言うなら、K氏が「聞いていない」という物の中身は、こちらで伝えた物がほとんどです。(後に細かく上げますが)

K氏の「聞いていない」という物の大抵はK氏がいま現在覚えていない物、もしくは覚えていないと言い張っている物です。

それに、雨宮は小道具の担当者ではありません。お手伝いです。

あくまで小道具の担当者はK氏です。

予算をオーバーした小道具費を、雨宮が負担すべきなんでしょうか?

大車輪の活躍

雨宮が加入してから毎日、科学ショーの準備をしました。それこそ、稽古のある日もない日も。僕と雨宮は稽古場を実験場と呼んでいました。先の取り決めもあり、おもいっきりブレーキを引きずりながらですが、僕としては本当に助かりました。というか、公演としてです。(一番感謝すべきなのはJーROCKでは?)小道具や衣装のみならず、通し稽古の音出しやら、僕が納得いかない効果音の素材を探してくれたり、それらを編集したり、本番中は僕の近くにいれないYくんのかわりに演出助手の仕事までしてくれました。

雨宮が入らなければ、確実に本番の幕は開いていなかったし、千秋楽を迎えることもできませんでした。これは言い切れます。

本番までの三週間の間で雨宮に休みをやれたのは一日半だけです。
その仕事ぶりは無償でお手伝いの域を完全に超えていると思います。

これはもう、本当に申し訳ないことをしていると思いつつ、どうにもなりませんでした。

じつは雨宮、この時、アパートの急な取り壊しが決まり、6月中に部屋を探して引っ越ししなければならない状況だったのです。(これはこれで本当にひどい話だったんですが)

本筋とは関係のない話かもしれませんが、自分のことをそっちのけで公演に尽くしてくれた雨宮の想いをこのような形で踏みにじられることが、僕はどうにも我慢がならないのです。そして、この話は以下のもう一つ僕が許せない問題につながります。

本番初日 K氏との会話

とにかく、舞台の幕は開けなければならない。でも、雨宮も一日も早く解放してやりたい。というので、雨宮は本番初日まで。その後の日々必要になる科学ショーの道具の製作やメンテナンスは演出部K氏を中心としたJーROCKの社員さんたちでやる。ということになっていました。

ところが、です。

ここまでの流れを見ていただければ想像がつくかと思いますが、小道具の製作以前に現場はぐちゃぐちゃ。

バタバタしつつも引継ぎしてゲネと本番の間にJーROCKの方々に一部作ってもらった小道具もガタガタで見ただけで使い物にならず、僕と雨宮で急遽作り直さなければならない始末。(JーROCKの方々も頑張って作ってくれたと思います。また、本番通して、JーROCKの方々に製作してもらっていた小道具もあります。)

舞台監督のIさんも「雨宮さん本当に今日までなの?Kさんにも言ったけどさ、小道具までやるならあと二人演出部のスタッフが必要なんだけど」とのこと。

雨宮も「やっぱりわたし残ります。無理ですよこれ」

僕もこれはダメだと思ってK氏と二人で話しました。

「現場がまわってなさすぎます。これ、無理じゃないですか?Iさん(舞台監督)もあと二人スタッフ入れないとって言ってましたよ?」

「はい。さっきIさんにも言われました。今からでも呼んでいただけるなら……」

「ただこれ明日、来てもらってまた明日教えて作ってもらわないといけないですけど、僕、その時間ないですよ。(小道具は膨大。各セクションの修正も膨大。)それに、演出部のスタッフって言っても、道具がちょっと特殊なんで、来てすぐ雨宮がやってるみたいには難しいと思いますけど」

「はあ。……雨宮さんはスケジュール的に難しいんですもんね」

「雨宮も、スケジュール的には空けられなくはないですけど、っていうかあいつも残りましょうかって言ってますけど。引っ越しのこともあるし、あとあいつも生活もあるので、無償でっていうのは言えないです。」

この時、雨宮は失業中で、一日も早く、アルバイトを見つけて働き始めなければならない状況でした。(本当に悲惨な状態だったんです)そのことはK氏にも事前に伝えていました。

「あいつも一日も早くバイトも見つけて働かないと、本当に大変なんです。ここまで一か月近くこれにかかりっきりで、他のなにする時間もなかったし、あいつにバイト料出してもらえませんか?それなら、雨宮に最後まで残ってもらって、僕もできるだけ小道具づくりに入って、それでやるのはどうですか?」

「ああ、それはもう、そうしていただけるなら、是非。雨宮さんが一番把握してらっしゃいますし、雨宮さんに残っていただけるならそれが一番ありがたいです」

というようなやりとりがありました。

しかし、K氏から最後に送られてきた請求の内訳は

② 宛名:株式会社ジェイロック
案件名:舞台「■■■■■■」
2022/6/15〜19 会場:六行会ホール
内容:小道具制作費
¥30,054+税 合計¥33,059
2部に分けて、作成お願いいたします。

②には雨宮さんの人件費も含ませていただいております。

小道具代の立て替えだけで¥50,326。

このうちJーROCKが経費として認めると言ってきたのが¥22,059。

雨宮の人件費……。

こんな人をバカにした話ある?

僕はこの時の会話のアルバイト代というのを、雨宮の一か月分の賃金という意味で発言しました。

正直なところ、ここでこの話をしなくても、雨宮にアルバイト代くらいは支払われるだろうと思っていました。なんなら、ここまで小道具づくりに時間と労力を費やした僕にもいくらかもらえるかも?とすら思っていました。(甘ちゃんです)

これは僕も悪いです。この時に細かい話を詰めなかったこと。具体的な額を決めなかったこと。

僕の「普通」という感覚を、あちら側も持ち合わせていると思い込んでしまったこと。

アルバイト料の話をしたとき、「それはもう、当然。こちらも考えています」というようなニュアンスをK氏から感じました。会話って(文章もですが)そこまでの経緯とか、関係性とか、その時の態度とか、総合的なコミュニケーションだと思うのです。ただこれは、僕の勘違いだと言われればそれまでで、法律的、ビジネス的な視点から言えば通用しないのかもしれません。

ただこの時は、本当にぐちゃぐちゃで、嫌になるほど色々あって、大変な現場でしたが、K氏とも何か通じるものができていると僕は感じていました。

精算の話の件であちらからメールがきたとき、僕は何度かK氏に「雨宮のギャラはいくらになりますか?」と問い合わせました。しかし、K氏から「精算の額が決定してから」という回答がきました。

小道具費の精算と雨宮の労働に対する賃金は別の話です。

いやな予感がした僕は、先の会話を思い起こし、もしかしたら、「アルバイト料は本番2日目以降の4日分しかお支払いできません」と言われるのではないか、と思いました。ここまでのJーROCK側の対応から「こちらはそう認識してました」と言われるかもしれないと。

そこに関しては本当に失敗したな、と思っていました。

ですが、現実は僕の想像を超えていました。

JーROCK側からの最終的な請求書の指示を見る限り、

この会話自体、K氏の中ではなかったことになっているようです。

本番さえ終わってしまえばこっちのものというようなJーROCK側の態度がどうにも我慢なりません。

Iさんの方も、演出部で追加で必要になった経費について「聞いていない」「払えない」と言われているそうです。一か月近く話をしてきて「もう、あきらめようかな」とおっしゃっていました。

稽古場でK氏・Iさん・僕の三人での打ち合わせの時、僕が、「こういうことは可能ですか?」とIさんに相談した際「可能ですが、予算のことでKさんと相談になります」ということで二人で話をされていました。具体的な額などは僕はわかりませんが、演出部の追加の経費について、都度お二人が話をしていたという事実はここに記しておきます。

JーROCKさん、「聞いていない」は通用しませんよ。

ここまで、僕の主張を一方的に書いてきたので、JーROCK側の言い分も記載するために、精算に関して、JーROCKのK氏、その上司である部長のR氏とのメールのやりとりを補足を交えつつ全文公開します。

が、ちょっと長くなりすぎたので、次回、

JーROCK側とのメールのやりとりを全文公開します。

につづきます。

ここまでお付き合いいただきありがとうございました。

最後になりましたが、

僕が今回の件を公にしようと思ったのは以下の理由からです。

支払われて当然の経費・賃金をJーROCKに支払わせたい。

JーROCKの対応に絶対に泣き寝入りしたくない。

これからJーROCKという会社と関わる人たちが僕たちと同じような思いをしない為の注意喚起。

そして、問題の根本、無理な予算組みからくる労働・金銭的負担を個人に押し付けるというような状況はJーROCKの現場だけではないと思われます。演劇、その他エンタメ業界における、一部の劣悪な制作現場の労働環境の改善。

とはいえ、僕はあまりに無名あまりに無力です。こんな記事を書いたところで、JーROCKの対応も演劇等の制作現場も何も変わらないでしょう。

沢山の方の反応があって初めて、何かが変わるきっかけになるかもしれません。

この記事を読んで「ひどい話だ」と思っていただけた方、また、演劇等の(一部の)制作現場の労働環境について、今一度考えるべきだと思われた方、どうか、この記事をSNSなどでシェアしていただけないでしょうか?

そしてできましたらご自身の言葉で意見や感想を表明していただけないでしょうか?

たくさんの声が集まらない限り、このひどい状況は何も変わらないのです。

尾米タケル


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