舞台鬼滅の刃 其の肆 遊郭潜入 レポ
満を持して新章突入
今や国民的キャラクターの竈門炭治郎を舞台で具現化してきた小林亮太さん(以下:小林炭治郎)から、今回役を継承したのはミュージカル経験豊富な阪本奨悟さん(以下:阪本炭治郎)。
観客に違和感を抱かせない役の継承ができる__テセウスの船が立証できるところが、2.5次元ジャンルの強みだと思っています。見事に舞台の炭治郎がそこにいました。鬼を除いたレギュラーキャストは継続なので公演を重ねるごとに安心感のある作品に感じます。
タイトルを変えても、お客はもう許すよ
初演から思ってる。これはストレートプレイではない。もう【歌劇】鬼滅の刃でいい。ミュージカルと謳いづらいならもう【歌劇】にしよう。それくらい毎回、キャスト・楽曲の気合がすごい。
和田俊輔さんがノリノリで歌うまキャスト用の難易度鬼の新譜を作っている。毎回そう感じる(嬉しい)
舞台が色づく煌びやかで艶やかな花街
原作・アニメでもそうだが鬼退治が夜の任務である以上、画面はずっとどこかうす暗い雰囲気のまま、禍々しい鬼たちと対峙していく。そこに初めて明確な色彩が加わるのは、この遊郭編が随一です。それがついに舞台上で解禁しました。
今回の全体的な絵面と演出を語るうえで、末満さんの過去演出作品に触れさせていただきたい。
まずは『色彩』の面。『舞台刀剣乱舞 禺伝 矛盾源氏物語』の絵作りがとても活かされている。遊女たちの華やかな衣装が明るい照明と舞台装置によってキラキラと輝いていた。派手でいい。それこそ音柱が主役の舞台に相応しい色どりとなっている。
次に『街並』の面。『舞台刀剣乱舞維伝 朧の志士たち』の分裂する街並。こういった舞台装置をみると『アラジン』を思い出して嬉しくなる。自由度の高い空間作りが舞台上では表現が難しい高低差や内外の奥行を与えてくれている。
最後に『映像』。日々進化する技術とクリエイターたちの作品。全体的に『舞台刀剣乱舞』をはじめ、近年の映像を多用した作品がすべて培われて、広い戦闘フィールドを獲得していた。
勝てないかもしれない不安と緊迫感(VS鬼)
アニメのキャスティング裏話でも言われていたが、あえて炭治郎のキャスト(花江夏樹さん)よりも「格上」敵うかわからない相手のご用意が待っている。舞台でもおそらくそれが踏襲される。過去の戦いに触れます。
■VS下弦伍:累(阿久津仁愛)
阿久津仁愛さんはミュージカルテニスの王子様の主演を務めたキャリアをお持ちだった。越前リョーマだったんだから歌は上手い。当然である。小林炭治郎とは歌のキャリアに差があるので、本当に歌で圧し負けていた。(原作通りです)
■VS下弦壱:魘夢(内藤大希)
ガチガチのミュージカルキャリアです。どうもありがとうございました。オープニングのトップバッターを「アカペラ」で成し遂げたお方です。ちなみにトップバッターを魘夢が担うことで、観客全員を眠らせる「血鬼術」をかける演出となっていると思っています!本当に天才!!
■VS上弦陸:堕姫&妓夫太郎(佐竹莉奈&遠山裕介)
グランドミュージカル常連を2.5次元作品に参入させる時が来たという感じ。これでは天下の刀ミュ出身でも刃が立たない…!だって2倍攻撃だし!?!?と混乱したため、わたしは慌ててチケットを取りました。
闇堕ちジュリエットと見事な喜怒哀楽グラデーション
小池先生演出の「ロミオ&ジュリエット」初演でジュリエットを務めた佐竹莉奈さんが鬼に堕ちました。これだけでミュヲタは観たくなるし、上弦の鬼の紅一点:堕姫にふさわしい完璧なエピソードだと思う。インタビューでボディメイクとエステ通いをしていたと仰られていたのであまりのプロ意識に期待が高まりました。
堕姫の有名な台詞で『美しくて強い鬼は 何をしてもいいのよ…!』とあるのですが、思わず「そうだよね、全然いいよ」と返してしまいたくなる迫力でした。ウィッグとシルエットが本当に漫画から飛び出てきたような美しさでした。
堕姫は前半のドS女王様然とした様子から後半戦~ラストにかけてのギャン泣きまでのグラデーションが肝なキャラクターです。お兄ちゃんが現れてからの顔つきだったり、ご本人同士も共演歴が長いのも幸いして本当の兄妹のように見えました。
圧倒的歌唱力と妓夫太郎の絶望追体験
2019年公演ミュージカル『ラヴズ・レイバーズ・ロスト-恋の骨折り損-』で拝見した時からレベルカンストしました??という音圧を浴びてきました。怒涛の戦闘で疲弊する主人公サイドの絶望感を歌でねじ伏せる感覚でじわじわとHPが削れていきます。音域書き下ろし楽曲ですよね??となる難易度の高い曲と激しく動いても全くブレない力強い歌声。上弦の鬼の恐ろしさを体感しました。
この兄妹は鬼になった経緯が描かれます。妹の誕生は運が味方したものの、環境によって理不尽を強いられた人生に激昂する。モノローグであったり切り取り過去シーンで進行されがちな回想シーンですが、あまりに天才で残酷な演出が施されていました。まさに絶望のミルフィーユ、末満さんの十八番です。ぜひ実際に体感してください。暗転観客嗚咽(絶望)が聴こえてきました。
遠距離攻撃とLEDパネル
今回のMVPは何といっても【遠距離攻撃たち】です。上弦の陸は2体ともリーチの長い遠距離攻撃と飛び道具を使います。堕姫は帯が武器です。以前の「矢印の血鬼術」の応用といいますか、簡単に言ってしまえば、劇団四季のアースラ:システムです。
足1本に対して1名の黒子が操作しています。堕姫はアースラよりも豪華に黒子を率いていました。堕姫新体操部、優勝です。
妓夫太郎の血鬼術「血鎌」は赤黒く発光する「血鎌くん」たちがブンブン回って動いていたのがよかった。形が絶妙で複数集まったり、鍔迫り合いしてるときの造形が美しくて不気味だった。アンサンブルのアクロバットが炸裂するハイスピードな戦闘シーンは必見です。
舞台装置の豪華さはもちろん、特に目を引いたのがLEDパネル。まさかああやってシルエット演出を使うとは脱帽でした。2.5次元舞台では主流なマッピング映像演出を、照明の干渉を受けない強さがあるので映像が綺麗なままの安心感がありました。
色鮮やかさをぜひ映像で
2023年12月10日(日)12:00/18:00公演がDMMTVで配信されます!
歌詞が変わった主題歌もさすがに覚えられなかったので、円盤の歌詞カードが早く欲しいです。おそらくですが、最初で最後の女声鬼パートになるはず。(兄妹が無惨さまとどうやら違う歌詞なのですがどうしても聞き取れない……!全員歌うますぎ)
主題歌レコーディング動画もぜひ見てください!
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?