印刷と印字とコスパ

某大手証券会社からの郵便物が我が家に複数届いた。
中身の本体の手紙は画像として見て全く同一のもので、おそらく印刷物なのであろうと思われる。
宛先はA4用紙を3つ折りしたサイズの紙片に印字されていて窓付き封筒が使用されていた。
で、手紙の中身はさておき、顧客宛の通信文を郵送する際のやり方についての話。

話は変わるが、一流のホテルでは、過去に利用したことがある客はスタッフが顔を覚えていて、「○○様、ようこそ」と出迎えてくれる。
ここで顧客の名前を呼ぶことが接遇として非常に大事なのだ。
これを真似るために、自動車ディーラーで店の駐車場に入ろうとする客の車のナンバープレートをカメラで読み取って顧客データベースと照合し、来店歴のある客だったらスタッフの携帯する端末に「○○様ご来店」と表示して、それを見たスタッフが名前を呼んで出迎える仕組みにしているという話を聞いたことがある。
接遇の場で相手の名前を呼ぶことから入るというのは、顧客満足度を上げるためには非常に有用だからである。

証券会社からの郵便物の話に戻る。
別の某ネット証券会社からの郵便物の場合で、お手紙そのものの文面中に「○○様」と印字されているものがあった。
それ以外の文面は家族全員宛のもので同一だったので、某大手証券会社が郵送してくる印刷物と目的は同じである。
印刷業者に発注するよりもプリンターで印字するほうが手間がかからず、顧客数がまだ少ないから大したコスト増にもならないから、という理由だったのかもしれない。
だが、「あくまで個人の感想」としては、手紙の文面中で「○○様」と印字されているほうが、「お客様各位」と書かれた印刷物よりも好感度は高い。

もちろん、版下となる画像データを印刷会社に送って大量印刷を依頼するのとプリンターで印字するのとでは、作成枚数が多い場合は前者のほうがかなりのコスト減になるのは当然である。
一般的な配布物であれば、よほどの少部数を急ぎ今すぐ必要とかでない限りは印字(プリント)ではなく印刷を選択するのは理解できる。
だが、多数の顧客相手に1通ずつを郵送するというケースであれば、いわゆる『宛名書き』の作業コストも考えたら、お手紙の左肩に顧客の住所氏名を印字して窓付き封筒に入れるほうが安くついたりしないだろうか。
紙も1枚で済むし。
そして何よりも、手紙の文面の中に各々の顧客の名前を入れることの効果がかなり高い気がするのだ。
つまり、『コスパ的』にはそっちのほうが高いのではないか、と。


以下、余談。
日本人の中で「プリント(印字)」を指すのに「印刷」と表現してしまう人がまだまだ多いように感じる。
Microsoft Windowsの初期のバージョンを日本語化する際に、印字を表す「Print」を誤って「印刷」と置き換えてしまったのが諸悪の根源だろうと思う。
「プリント」と「印刷」は仕組みとして全くの別物なので、これはもう翻訳ミスの領域なのだけどね。
Star Warsシリーズ劇場第3作のサブタイトルと同様に、『20世紀で最低最悪の誤訳ワースト10』には確実に入ると思う。


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