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B2B法人営業とは何か?2. そもそも「営業」とは何か?

「営業」を定義することから始める

考察を深め、思考を体系化していくために「営業」を定義することから始めてみます。本コラムでは「B2B法人営業」を前提としているので主語を「法人営業」とさせていただきます。


法人営業とは、見込客に対して行う、自社の商材の購買に向けたポジティブな意思決定を促すための、対人コミュニケーションの総称であり、その主体となる職種を指すこともある。なお、見込客には新規顧客だけでなく既存顧客も含まれる。


いかがでしょうか。順を追って考察を加えていきます。

まず「見込客」という言葉ですが、何等かの経緯で営業パーソンと相対している状況を鑑みると、購買の意思が全くない顧客は含まれないと思います。非見込客も対象としてニーズを喚起していくのは、マーケティングの役割かなと考えました。なので、営業がお相手するのは「すべからく見込客である」と言って間違いなさそうだと、判断しました。

営業にはコミュニケーションコストがかかっている

同じことを少々語気を強めて言うと「営業は購買の意思が全くない顧客のお相手をしてはいけない」ということです。なぜならば、対人コミュニケーションにはコストがかかるからです。回収の見込みのないコストをむやみに投下してはいけません。

こう言うと「新規顧客は購買の見込みが未知数なので、営業としてどう対応するべきか?」という一つの論点が浮かび上がります。新規顧客開拓については別で論じますが、さわりに触れておくと、
①購買可能性が高いと見込まれる顧客に絞り込む(=ターゲティング)
②既存顧客に比して、コミュニケーションコストがかかることを覚悟する
③営業プロセスの各所で顧客の「購買の可能性」を常に見極める
④それでもやらない訳にはいかない

と整理できます。

営業活動はタダじゃない

VUCAな時代の営業スタイル

次に「商材」という言葉ですが、プロダクトもサービスもその組み合わせも全て「商材」と表現しました。
少し横道に逸れますが、商材そのものが持つ魅力だけで飛ぶように売れていく時代はかなり前に終わっています。圧倒的差別化や圧倒的ブランドで売れていく商材(iPhone?や東京ディズニーランド?)もありますが、稀でしょう。「モノ」があふれかえる成熟市場、ネット社会到来による情報の非対称性の消滅、多様化する顧客ニーズ、技術革新のスピード(=プロダクトライフサイクルの短期化)などを鑑みると、「モノ」が売れにくくなっていることは確かです。形のない「サービス」は、差別化ポイントやブランドの可視化が難しいという意味で、さらに顕著でしょう。

翻って、商材を売り込む存在である「営業」の難しさと重要性は増していると確信します。だからこそ、スタイルとしてのいわゆる「ソリューション営業」(課題解決型営業、コンサルティング営業、インサイト営業など、提唱者は「定義が違う」と主張するでしょうが、ここでは便宜上一括りにします)がもてはやされているのだと思います。なお、ソリューション営業についても、別で詳しく論じたいです。

組織購買における意思決定をマネジメントするための「営業プロセス」を意識することが重要

さらに「購買に向けたポジティブな意思決定」に込めた意図を説明します。まず「購買」とは法人営業が対象とする顧客の行為なので、「組織購買」のことです。カウンターパートが決定権者であったとしても、全くの個人で意思決定しているのは稀でしょう。採用する商材の効用が、当該顧客の組織内で広範囲に影響するほど、意思決定に関わる部門や役職は増えていきます。
それに伴い、意思決定に関わる一個人の感情は薄れ、代わりに経済合理性が重視されます。つまり、「営業の人の感じが良かったので決めました」という購買理由は、組織購買においてはほぼ皆無と言えます。

このことを営業サイドから考えると、働きかける対象が広範囲にわたるということと、意思決定を促す営業活動は徹底的に合理的であることが求められます。だからこそ、受注に至る「営業プロセス」を考えることと、そのプロセス(顧客サイドから見ると「購買プロセス」)をうまくマネジメントすることがひときわ重要になってくるのです。要するに「案件をマネジメントする」ということですね。一般論としての「組織購買の構造」を理解しておくことと、当該顧客における購買プロセスを探り、理解し、影響力を行使していくことが求められます。

いわゆる案件マネジメント。マネジャーがファシリテートする「営業会議」のイメージです。

コミュニケーションはスキルであるという認識

最後に「対人コミュニケーション」に込めた意図を説明します。結論から言うと「そこにはスキルが求められる」ということです。スキルなので、上手い人もいればそうでない人もいます。

具体的には、場の空気を読むことに始まって、顧客のニーズを推察する仮説設定力、ニーズヒアリングのための質問力、要点や核心を捉える論理的思考力、顧客のニーズを充足する企画の立案力、企画内容を説得的に説明するプレゼンテーション力、決定権者の意思決定に働きかける戦略性や、時に戦略を超えた情熱の訴求力、顧客組織内の意思決定プロセスに関与していく根回しの力、などでしょうか。
企画力をコミュニケーション力に含めるのは、複雑で難度の高い顧客課題を解決に導く企画は、営業一個人で立案できるものではなく、マネジャー始め社内リソースを巻き込む力が必要と捉えれば、一理あると考えました。

以上、法人営業を定義し考察を加えてみました。次回以降、今回の定義に則って段階的に思考を深めていきたいと思います。

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