先輩女子と町中華で飲った話(断片と枝葉④)
ひとつ上の先輩女子といえば、もうひとりサークルで仲の良い人がいた。共通点は近所で一人暮らしをしていたこと。
ちゃんと約束をした上で行ったんだかどうだったか、一度(あるいは二度?)、二人きりで夕飯を食べたことがあった。
三鷹の中華屋さんだ。まだあるのかな。
あった。
餃子は食べた。ビールも飲んだかな?たぶん飲んだ。
ラクロス部でゴリゴリ活動していた兵庫出身の先輩は、見た目はややギャルっぽかったけど医者の家系で育ちがよく賢くてスポーツ万能の才色兼備、負けん気が強く自信家で、どのスポーツチームにいようと女子サッカーの澤穂希のような存在になれるタイプ。「やってみたらできないことなんてないやん」という感じで関西弁も相まってなんとも頼もしいんだけど、いま振り返ってみるとまあ強烈な個性だった。それがこと恋愛面になると途端に弱さを滲ませてかわいらしくなって、そこだけが唯一サークル内でネタにできるというか茶化せるところだった。
正直、二人でどんな話をしたのかよく憶えていない。当たり障りない話に終始したような気もするけど、そういう話から実はお互いの深い部分を掘り下げる話になったような気もするし、今だったら深いところまで推察できそうだからそんな気がしているだけかもしれない。
ともかくお互いひとりでご飯を食べるよりかは楽しかったには違いなくて、また一緒にご飯しようね、と社交辞令ではなくものすごく前向きなニュアンスの言葉を交わして、その日は別れた。すぐに二回目三回目が実現するもんだと思ってたけど、それぞれ学年が上がった影響もあってか、その機会が何度も訪れることはなかった。
でも、その日の帰り道、自転車を漕ぐ自分の心が妙に浮き立っていたことはちゃんと憶えている。嬉しかったのだ。単純に二人だけの関係性ができたこともそうだし、一組の男女らしく対等のコミュニケーションを交わしてサークル仲間で過ごすときの後輩キャラと演じ分けられ(るところを先輩に見せられ)たことが。
今はいささか大人になりすぎてしまったから、それもあの時期だからこそ感じられた"手応え"。自分をちょっとだけ大人に近づけてくれた"手応え"。