見出し画像

貯まらないポイントカード

学生の頃に山陰地方を訪れた一人旅のハイライトは、最後の最後に寄った宍道湖のほとりのカフェ。
渡り鳥が飛来する時季だったのか、生憎の霧雨に濡れたウッドデッキの欄干には水鳥の大群が留まっていた。一斉に飛び立っては、大きな模様を描くように湖上を旋回してからまた舞い戻る。神秘的な生命の営みに見入ってしまい、コーヒーを二杯もおかわりした。

会計をすると、女性の店員さんにポイントカードを勧められた。
「あの…今から、東京に帰るんです」
やんわり辞退すると、彼女は優しく微笑んでこう言った。
「有効期限はありませんので、また遊びに来てください」

・・・

あれから、十年以上が経った。
あの日もらったポイントカードはもうどこにあるものか見つけられそうにないけれど、お店は今もあの場所に在るようだ。

いつか、きっと行こう。
そして、一向に貯まらないポイントカードをまたもらうのだ。

「サ」ポートに「シ」ェアと「ス」キ…『「セ」ンスが爆発してますね』という「ソ」ウルフルなリアクションまでお褒めの"サシスセソ"ください!