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オキサトさんに聞こう④ 伝統工芸ってなんですか?その2


このコラムは、京都芸術大学京都伝統文化イノベーション研究センターのために書いたものですが掲載が終わっていたので、ここに再掲しました。


Q:
そもそも伝統工芸とは何か<タンクトップ子>
伝統工芸って何ですか?<はるか>

A
今回は、さらに伝統工芸の持つ多様性というか、いろんな伝統工芸があることを書きたいと思います。例えば「パンを使った料理」とひと言でいっても、サンドイッチも、ハンバーガーも、ホットドックも、フォカッチャもあるように、『伝統工芸』とひと言でいっても、いろんなものがあるんです。
今回は数字でみる伝統工芸です。

237
まず、どのくらいの『伝統工芸』と呼ばれる技術があるのか。国が認定している「伝統的工芸」というもので、237品目(令和4年3月現在)あります。結構、ありますね。

国が地域産業として根付き残っていますねと認めただけでもこれだけあり、これとはまた別に県が認めたものや、市町村で認めたもの、公認はされていないけれど地域で引き継がれているものを数えるといったい幾つあるのやら。前に、県が認めたものを数えたことがありますが、おおよそ800でした。

これだけ、伝統的な手工芸が残っている国というには非常に珍しいです。特に経済先進国と呼ばれる中ではダントツです。これは1億人を越える人口がいて内需で生産と経済が回っていたことと、各時代の為政者が同じ(その他の国からも分離されてる)日本列島内の人だったからだと思います。中国では為政者が民族ごと変わる事で技術も生活様式も変わりましたし、ヨーロッパは陸続きのため平均化が進んだり、産業革命の影響が非常に強くでました。

では、237品目をちょっと整理していみると、大まかにですが、陶磁/金属/染/織/漆/木・竹/紙/人形/の9種くらいになります。もちろん、石工・七宝・革細工など9種に納まらないものもありますが、複数の地域で残っているものは、大体9種です。237品目の内、一番、認定が多いのが織物の38品目。次が木工品・竹工品だけで32品目の認定を受けていて、次が陶磁器の31品目、漆器23品目と続きます。この4種で認定の半分以上になります。

大きく規模や目的に応じて、僕なりに整理してみたところ、
●祭具など伝承を目的としている『伝承工芸』
●技を引き継ぎながらも鑑賞を主目的につくる『美術工芸』
●生活用品を伝統的な作法や素材を背景につくる『生活工芸・手工業』
●地域を支える地場産業のサイズまで大きくなった『産業工芸』
の4つに分けることが出来そうです。

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このようにひとことで『伝統工芸』といっても、個人で引き継いでいるものから、地域の雇用を支えているものまで多種多様で、同じように低迷が続いていると言えども、実はおなじ解決方法では問題は片付きません。

いま、伝統工芸にふれ、学び、場合によっては、伝統工芸の未来を考えるとき、もう少し伝統工芸の中身から整理をしてみるのも良いかもですね。

文責:永田宙郷